元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「蜩ノ記」

2014-11-02 06:43:17 | 映画の感想(は行)

 退屈な映画だ。特に前半から中盤にかけては、睡魔との闘いに終始した(笑)。別に、作品全体のテンポが一様にゆっくりとしていることが欠点だとは思わないが、それに合わせて情報(プロット)の提示も不十分になっていては評価出来ない。小泉堯史監督にしては珍しい失敗作だ。

 19世紀初頭の豊後の小藩・羽根藩にて、若侍の檀野庄三郎は城内で刃傷騒ぎを起こしてしまう。家老の中根兵右衛門の計らいで何とか切腹を免れた彼だが、その代わりに山奥の寒村に蟄居させられている元の郡奉行である戸田秋谷の監視を命じられる。秋谷は、7年前に藩主の側室との不義密通の罪で10年後の切腹と家譜の編纂を命じられており、あと3年に迫った切腹を前に逃亡しないか見張るのが庄三郎の役目である。

 彼は秋谷の家に同居して家譜の編纂を手伝うことになるが、誠実な人柄の秋谷はとても不義密通をやらかすような者には見えない。やがて庄三郎は、秋谷が切腹を命じられる原因となった事件の真相を探ろうとする。

 原作の葉室麟による同名小説(第146回直木賞受賞作)は私も読んでいるが、とにかく不義密通騒ぎの筋書きが分かりにくくて閉口した。読者にちゃんと伝える気が無いのではと思ったほどだ。ならばこの映画化ではそのあたりが平易に説明されているのかというと、全然そうではない。作劇のテンポの遅い間に筋書きをちゃんと示してくれれば良いものを、晦渋さまでも原作を愚直にトレースしているので、観ている側にはストレスが溜まる一方である。

 では文芸物の時代劇らしい風格が感じられたかというと、それも不発。画面は汚く、奥行き感は無い。カメラワークには洗練された箇所が見当たらず、凡庸な展開に終始。

 キャスト陣にしても、秋谷役の役所広司とその妻に扮する原田美枝子の所作だけは何とか体裁が整えられているが、庄三郎を演じる岡田准一はNHKの大河ドラマの主役として力演を見せた者と同一人物とは思えないほどの大根ぶりだ。青木崇高や寺島しのぶ、井川比佐といった面々も生彩が無い。

 そして、秋谷の娘を演じる堀北真希は最低だ。原作でもこのキャラクターはクローズアップされていないのでそれほど演技力を要する役柄ではないのだが、それでも堀北のようなパフォーマンス能力のカケラも無い者が画面をウロウロしているだけでも気分が悪い。彼女はデビューして約10年にもなるのに、演技力を高めるどころか演技を上手くやろうとする意志さえ感じられないのだから呆れる。

 舞台が今の大分県であるにも関わらず、ロケを東北で行っているという意味不明な製作方法も含めて、観る価値を見出せない映画である。

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