元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「バスケットボール・ダイアリーズ」

2007-03-22 06:44:43 | 映画の感想(は行)
 (原題:The Basketball Diaries)95年作品。60年代の青春文学の傑作と言われるジム・キャロル(正直言って、よく知らない)の「マンハッタン少年日記」の映画化。ミッション・スクールに通うジム(レオナルド・ディカプリオ)は少しツッパッてはいるがバスケットボールと詩が好きな繊細な少年だった。しかし、友の死をきっかけに軽い気持ちで手を出したドラッグで退学になり、家からも追い出され、ホームレス同然の暮らしをするジムとその仲間は次第に犯罪に手を染めていく。監督はこれがデビューのスコット・カルヴァート。

 これを観て真っ先に思い出したのがドイツのウリ・エデル監督による「クリスチーネ・F」(81年)である。純真な若者がドラッグに溺れていくさまをヴィヴィッドに描く内容が似ており、ロック音楽の効果的な使い方やスタイリッシュな映像という点でも共通している。ただ、感銘度では「バスケット・・・」は大きく遅れをとっているのは確かだ。

 理由はこれがディカプリオを主演としたスター映画だということだ。当時は見るからに繊細な美男子タイプだった彼(今では見る影もないけど ^^;)がドラッグに蝕まれていく様子を痛々しく演じれば演じるほど、彼のファンの女の子のサディスティックな快感を含んだ悲鳴(なんじゃそりゃ ^^;)は沸き上がるものの、ハタから見ると彼のプロモーション・フィルムにしか思えないのは私だけだろうか。

 彼が麻薬に手を出すプロセスが納得できるように描かれていないし、彼の母(ロレイン・ブラッコ)の扱い方も中途半端。バスケットの相手をする黒人の男の描き方は図式的で、“麻薬を始める奴らのタイプあれこれ”に対するモノローグが出てきてシラケさせたと思うとラストには説教じみた演説(?)もある。対してカメラワークは気取りまくり、バックの音楽とのコラボレーションはもろMTVだ。「クリスチーネ・F」のような容赦ないリアリズムと対象を突き放す思いきりの良さは望むべくもない。

 要するにこれは、その頃のディカプリオに夢中になるような年代のために作られた“麻薬防止キャンペーン”の宣伝フィルムだと思う。それ以上でも以下でもない。私はに主人公よりさっさとジャンキーから足を洗ってタフに生きていくジュリエット・ルイス扮する少女の方が印象的だった。

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