元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「フォード・フェアレーンの冒険」

2019-05-05 06:39:28 | 映画の感想(は行)
 (原題:THE ADVENTURES OF FORD FAIRLANE )90年作品。レニー・ハーリンといえば90年代にいくつも大作を手掛け、売れっ子の監督になったと思われたが、その後は目立った実績を上げていない。実を言えば、彼の真骨頂はメジャーになる前の諸作にあった。具体的には88年に製作した「エルム街の悪夢4 ザ・ドリームマスター 最後の反撃」と本作だ。同年のゴールデンラズベリー賞を総ナメしたほど評論家筋からはケナされたらしいが、個人的には大好きなシャシンである。

 軟派な私立探偵フォード・フェアレーンは、ある日人気DJのジョニーから行方不明の妹ズーズーを探して欲しいとの依頼を受ける。だが、その直後にジョニーは何者かによって消されてしまう。一方、大金持ち女のコリーンからもズーズーを探すよう頼まれたフォードだったが、捜査の結果、ズーズーはヘヴィメタルバンドのヴォーカリストであるボビー・ブラックの彼女だったことを突き止めるものの、ボビーもすでに殺されていた。どうやらレコード会社の社長グレンデルが怪しいと踏んだフォードだったが、今度は彼自身が殺し屋のターゲットになってしまう。



 正直言って謎解きの興趣はあまりないが、この場合それで構わない。なぜなら本作は、キャラクターを見る映画だからだ。とにかく、フォードの造型が最高だ。ロスアンジェルスの音楽業界専門探偵という怪しげな稼業に携わり、自分の“ナニ”に名前を付けるほどのクレイジーな野郎である。

 乗る車はギンギンにデコレートしたフォードで、住処は海辺のビーチハウス。なぜかどこの高級クラブやディスコも顔パスで出入り可能。寝るときは常に女を二人以上侍らせると豪語している。絶えず意味も無くカッコ付けていて、特に煙草に火をつける際の“プロトコル”には爆笑させられた。毎朝目覚まし代わりにジミ・ヘンドリックスの「パープル・ヘイズ」を大音量で鳴らすのをはじめ、劇中にはロックが常時流れて、それか作劇のリズムと絶妙にシンクロしている。

 ハーリンの演出はハッタリを思いっきり効かせた賑々しいものだが、それがまたこの主人公像にピッタリである。主役のアンドリュー・ダイス・クレイはまさに怪演。プリシラ・プレスリーやロバート・イングランド、ウェイン・ニュートン、マディ・コーマンといった面々も濃い。オリヴァー・ウッドのカメラによるカラフルな映像、そして華やかな衣装デザインや美術も場を盛り上げる。

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