元・副会長のCinema Days

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「新ポリス・ストーリー」

2016-05-27 06:17:08 | 映画の感想(さ行)
 (原題:重案組)93年香港作品。題名とは違い、この映画は「ポリス・ストーリー」シリーズとはまったく関係のない独立した作品である。ジャッキー・チェン扮する刑事は職務に忠実だが、興奮すると行き過ぎた行動を取るため、警察内では問題児扱いされている。そんな彼が香港経済界を牛耳る大物不動産業者のボディガードを命じられる。しかし、警護の目をまんまとかいくぐった犯罪グループにより、不動産王は誘拐される。犯人を追ってジャッキーは上司と台湾に飛ぶのだが・・・・。

 いつものジャッキー映画につきもののコミカルなアクションやギャグは一切なし。とことんマジメな刑事ものである。それは犯人たちの描き方にもあらわれていて、単純な身代金目当ての誘拐ではなく、えげつないやり方で現在の地位を得た不動産王への私怨でこり固まっている。従業員にロクに給料も払わず、地元住民から利益を吸い上げ、法律なんて知ったことじゃない。



 さらに彼が香港出身ではなく、大陸から流れてきたヨソ者であって、それが多くの敵を作っていることが強調される。そして香港警察と台湾の当局、中国警察との確執。中国への返還が近い香港の逼迫した状況を随所に織り込み、シリアスなタッチで観客に迫る。

 アクション・シーンは相変わらずスゴイ。とんでもないカー・チェイスや乱闘場面が見ものだが、身代金を持った不動産王の夫人を何百人という私服警官が尾行する群衆シーンのうまさや、携帯電話を使ったサスペンスの盛り上げ方に注目したい。警察内にも犯人グループがいて、そいつが捜査を巧妙な手段で潰していくプロセスも描かれる。なかなかシビアーな展開のドラマなのである。

 クライマックスは大爆発寸前の九龍城。犯人たちとの激闘、取り残された子供を助けるために獅子奮迅の活躍をする主人公。ハデな爆破シーンもさることながら、必死の脱出を試みるジャッキーを容赦ないタッチで描く演出に感心した(監督はアクション派のカーク・ウォン)。

 苦渋に満ちたも含めて、香港映画には珍しい“実録社会派アクション劇”である。普段のジャッキー映画とは少し趣を異にするが、警官を主人公に据えることが多いと、いつかはこういうテーマを扱わねばならないのだろうか(彼の映画ではお馴染みのエンド・クレジットでのNG集も無い)。また、この映画は女性がストーリーにあまり絡まない。男のドラマである。その意味でもユニークだ。

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