元・副会長のCinema Days

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「ラ・バンバ」

2020-11-06 06:23:22 | 映画の感想(ら行)

 (原題:La Bamba)87年作品。公開当時は話題になった映画だが、出来の方も良い。夭折した実在のロックスターを主人公に、その“周囲”を丁寧に描き、青春映画としてかなりのレベルに達している。そしてもちろん、大ヒットしたテーマ曲をはじめ劇中で流れるナンバー、および演者たちのパフォーマンスは素晴らしいの一言だ。

 1957年。ブドウ農場で働く16歳のリッチー・バレンズエラは音楽好きで、いつかプロデビューして家族の生活を楽にさせたいと思っていた。ある日、刑務所に入っていた兄のボブが出所して帰宅する。父親が違って性格も正反対の2人だが、仲は良かった。如才ないボブは、一家をロスアンジェルス郊外の町暮らしへ生活を変えてやる。

 リッチーは新たに通い始めた学校で、ブロンドの少女ドナと仲良くなり、同時に地元のバンドに加入。悪酔いしたボブのためにデビューコンサートは散々な出来に終わったが、その演奏を聴いていたデルファイ・レコードのプロデューサーであるボブ・キーンはリッチーの実力を認め、レコード会社と契約することを奨める。やがて頭角を現したリッチーは、次々とヒット曲を生み出すのだった。バディ・ホリーらと共に飛行機事故により17歳で世を去った、リッチー・ヴァレンズの生涯を描く。

 リッチーとボブの関係性は興味深い。明るくて誰からも好かれ、音楽の才能にあふれた弟に対し、いくらか弁は立つが、所詮は風采のあがらない凡人のボブ。映画はこの2人を対比し、運命の残酷さをリアリスティックに描き出す。特に、ただ生き残っただけというボブの境遇には観ていて身を切られるものがある。

 それから、本作にはマイノリティである主人公が直面する偏見や差別が意外なほど取り上げられていない。せいぜい、白人であるドナの親がリッチーに対していい顔をしないぐらいだ。これは別に手を抜いているわけではなく、平等のチャンスを与えられたアメリカ人としてアメリカン・ドリームを追い求めた主人公像を描く上で、さほど重視する必要が無いと割り切ったためだろう。

 ルイス・ヴァルデスの演出はテンポが良く、かつ堅実だ。本来は製作担当のテイラー・ハックフォードが監督する予定だったらしいが、ハックフォードの演出タッチではこれほど盛り上がらなかったと想像する(笑)。主演のルー・ダイアモンド・フィリップスをはじめ、イーサイ・モラレス、ロザンナ・デ・ソート、ダニエル・フォン・ゼルニックなどのキャストは皆好演。ロス・ロボス、カルロス・サンタナなど、同じラテン系のミュージシャンによる音楽には文句の付けようが無い。

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