元・副会長のCinema Days

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「グッバイ・クルエル・ワールド」

2022-09-30 06:20:33 | 映画の感想(か行)
 これはちょっとヒド過ぎる。まったく映画になっていない。まさにタイトル通り早々に“グッバイ”したくなるようなシャシンだ。監督の大森立嗣は出来不出来の幅がある作家だが、今回の仕事ぶりは下から数えた方が早い。ネット上では“寝たという声が多かった”とか“途中退場する客がいた”とかいうコメントがあるが、それも頷けるほどの内容だ。

 覆面姿の5人組が、ラブホテルで秘密裏に行われていたヤクザの資金洗浄現場を急襲し、大金を強奪する。彼らは犯行後金を山分けして日常生活に戻るのだが、ヤクザ組織も黙っておらず、裏金で飼い慣らした現役刑事を伴い強盗団を追い掛ける。さらには分け前をもらえなかった強盗組織の一人も、逆ギレして凶行に走ろうとする。

 この“ヤクザの金を横取りした連中と、取り戻そうとするヤクザとの抗争”という設定は、石井隆監督の快作「GONIN」(95年)を彷彿とさせるが、本作はあの映画の足元にも及ばない。展開は間延びして緊張感が希薄、かつ突っ込みどころ満載。キャラクター設定はいい加減で誰一人として共感できる者がいない。さらにはアクション場面はデタラメの連続(たとえば、白昼堂々と素人がショットガンを撃ちまくるというシーンは勘弁して欲しい)。これほどホメるべきポイントが見つからない映画も珍しいのではないか。

 かと思えば、バックに流れる音楽がボビー・ウーマックなどのブラック・ミュージックだったり、主人公たちが乗るクルマが古いアメ車だったり、ハネっ返りの若い男女二人組が無茶をやらかしたりと、明らかにクエンティン・タランティーノ作品をパクっているあたりが痛々しい。別にヨソの映画を“参考”にするなと言いたいわけではないが、これほどの芸の無さには呆れるしかない。

 脚本担当の高田亮は「さよなら渓谷」(2013年)や「そこのみにて光輝く」(2014年)などで知られるが、今回の不調はこちらが心配するほどだ。主演の西島秀俊をはじめ、斎藤工に宮沢氷魚、玉城ティナ、片岡礼子、螢雪次朗、奥田瑛二、鶴見辰吾、そして監督の実弟である大森南朋など、キャストはかなり豪華。だが、いずれも機能していない。特に強面とは程遠い西島が元ヤクザというのは、無理筋にも程がある。ラストの処理もまったく釈然とせず、落ち込んだ気分で劇場を後にするしかなかった。

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