元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「シックス・ストリング・サムライ」

2021-10-29 06:27:32 | 映画の感想(さ行)
 (原題:Six-String Samurai)98年作品。超低予算のB級(いや、それ以下かも)映画で、私自身もどうしてこんなシャシンを観たのか今となっては分からないが(笑)、妙なパワーがあって捨てがたい。現役の有名映像作家も、デビュー時はマイナーな作品に手を染めていた例も多いことを考え合わせると、存在価値はあるのだと思う。

 1957年に起きた核戦争後のアメリカ。国土はソ連に占領され、残った自由の地はロスト・ヴェガスだけになってしまった。しかしその町も、暗黒のサウンドで世界征服を企む雷ギターを持つ悪魔デスの支配下に置かれている。聖地を奪還すべく、ロックンロール戦士たちが集まり戦いを繰り広げる。そんな中、黒縁メガネをかけた最強の剣術とギターテクニックを持つバディは、道中で命を救った少年キッドと共に、ロスト・ヴェガスを目指す。



 「マッド・マックス」を思わせる世界観をバックに、クンフーアクションが炸裂するという御膳立てだが、かなり画面はチープだ。それも並のチープさではなく、まるで“高校の文化祭の出し物”レベルである。

 ところが、主人公のキャラがかなり立っており、彼を見ているだけで愉快な気分になってくる。バディ・ホリーを無理矢理にモデルにしたようなメガネ野郎だが、ボロボロの傘と必殺のギターを携えて敵をバッタバッタと倒してゆく。アクション場面が“意外と”良く出来ており、手抜きとも言えるカット割りながら、要領の良さでキレとスピード感が出ている。

 面白いのは、デスの造型が完全にヘビメタ系で、作者がその手の音楽を毛嫌いしていることが一目瞭然である点だ。代わりに送り手が偏愛しているのはプレスリーに代表されるロカビリー系であるらしく、そんなBGMが楽しげに鳴り響く。演出はぎこちないしラストのバトルも腰砕けだが、B級に徹した思い切りの良さで観終わって“まあ、いいじゃないか”という気分になってくる。

 主演のジェフリー・ファルコン、監督のランス・マンギア、共にその後の仕事ぶりは知らない。でも、この映画を作った時点では彼らは夢中で盛り上がっていたのだろう。それを思うと、本作を嫌いにはなれない。
コメント
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