元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ボヘミアン・ラプソディ」

2018-12-10 06:52:22 | 映画の感想(は行)

 (原題:BOHEMIAN RHAPSODY )映画の出来自体は大したことはない。何しろ監督が「X-MEN」シリーズのブライアン・シンガーだ。多くを望むのは酷というものだろう。しかし、音楽が鳴り響くとドラマは躍動し、観る者の目を惹き付ける。そしてラスト約20分間のライヴ場面は、素晴らしい高揚感を味わえる。難しい能書きは抜きにして、とにかく音楽を聴かせることに徹した本作の思い切りの良さがヒットしている要因の一つだと思う。

 世界的人気ロックバンド“クイーン”のヴォーカリストで、91年に45歳の若さでこの世を去ったフレディ・マーキュリーの伝記映画だ。複雑な生い立ちと、(当時は白眼視された)性的指向。家族との確執や、ストイックな姿勢から周囲から浮いてしまう特異なキャラクターを、映画は手際よく紹介する。

 だが、そこには挑発的な仕掛けや登場人物の内面に鋭く切り込む演出手法は見られない。あくまで事実(と思われているもの)を順序よく並べているに過ぎない。とはいえ、本作に限ってはそういう批判は相応しくないと思う。

 フレディを演じたラミ・マレックをはじめ、ブライアン・メイ役のグウィリム・リー、ロジャー・テイラーに扮したベン・ハーディ、ジョン・ディーコンを演じたジョセフ・マッゼロ、彼らは本物に外見が似ている上に、特徴も良く掴んでいる。これだけで大方の音楽ファンは満足するのではないだろうか。“クイーン”を取り巻く人物たちを演じたルーシー・ボーイントンやエイダン・ギレンなども、実際は斯くの如しだったと思わせるだけの説得力がある。

 実を言うと、私はこのバンドには少し思い入れがある。デビュー・アルバムの邦題は「戦慄の王女」だったが、最初に聴いたときは文字通り“戦慄”してしまった。その頃はガキのくせにロックは一通り聴いていたつもりだったが、彼らのサウンドは他の誰とも似ていなかったのだ。セカンド・アルバムはさらに“戦慄度(?)”は高くなったが、サード・アルバムでは衝撃は和らいだ。ただ、限られたロックファンの興味の対象から広く一般にアピールするようになったのは、その3枚目のアルバム以降だったのは皮肉なものだ。

 残念ながら映画ではカットされたようだが、このバンドに本国よりも先に高く評価したのは日本のファンだったというのは有名な話だ。いくらルックス面での優位性があったとはいえ(笑)、ああいうユニークすぎるサウンドを受け容れたのは、画期的なことだと思う(今から考えると信じられない)。
コメント
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