元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ゆりかごを揺らす手」

2018-12-09 06:21:17 | 映画の感想(や行)
 (原題:The Hand That Rocks The Cradle)92年作品。カーティス・ハンソン監督といえば「L.A.コンフィデンシャル」(97年)を皮切りに、2016年に世を去るまで秀作や佳編を次々と世に問うた作家だが、その昔は本作のような“お手軽な”映画も手掛けていた。もちろん、凡百の演出家とは違う張りつめたタッチはこの映画でも見受けられるものの、作品自体のアピール度はそれほどでもない。

 シアトルの高級住宅地に住むクレアは、は2人目の子供を身籠ったため、産婦人科へ診療に訪れる。だが、医師のモットは診察するふりをしてワイセツな行為に及んだ。怒ったクレアは警察に通報するが、この一件がマスコミに大きく取り上げられ、しかも“被害者”はクレア一人ではないことが判明する。



 窮地に追いやられたモットは自ら命を絶つ。それを目の当たりにしたモットの妊娠中の妻ペイトンは、ショックを受けて流産。それが元で子供が出来ない身体になってしまう。一方クレアは無事に男児を出産するが、そこにペイトンが身分を隠しベビー・シッターとして接近。クレアとその家族に対しての復讐を画策する。

 自殺したモットに対して同情は出来ず、逆恨みで凶行に走るペイトンは処置なしだ。しかし、クレアが清廉潔白なのかというと、そうではない。自身の告発によって産婦人科医を自殺に追いやっているにも関わらず、そのことを気にしている様子は無い。それどころか、使用人のソロモンを当然のことのように邪険に扱う。主要キャラクターが感情移入出来ない者ばかりであるため、早々に観る気が失せる。

 ペイトンに扮するレベッカ・デモーネイの狂気を帯びた演技や、ロバート・エルスウィットのカメラによるハードでクールな画面造型は見応えがあるが、基本線が通俗的なサスペンス・ホラーであるため、取り立てて評価する意味を見出しにくい。それにしても、彼の国の“山の手”は日本のように無闇に塀が建てられておらず、見通しが良くてクリーンだ。防犯上どうかと思う点もあるが、居心地に関しては心惹かれるものがある。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする