元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「銃」

2018-12-01 06:35:33 | 映画の感想(さ行)
 面白くない。ストーリー展開は説得力に欠けているし、キャラクター設定も感心しない。何より、主人公の饒舌すぎるモノローグにはタメ息が出てくる。なお、原作になった中村文則の同名小説はかなり前に読んではいるが、内容はすでに忘却の彼方だ。

 一人暮らしの大学生・西川トオルは、ある雨の日に河原で一丁の拳銃を拾う。どうやらヤクザがらみのブツらしいが、彼は警察に届けずに持ち帰る。思わず銃が手に入ったことで、退屈だった彼の生活はスリルに満ちたものに変貌。当初は部屋で眺めるだけで満足していたトオルだが、やがて銃を持ち歩くようになる。調子に乗った彼は公園で野良猫に向けて発砲するが、その銃声が周囲の住民の耳に届き、警察が動き出す。一方、トオルは同じ大学のユウコといい仲になりつつあったが、銃の存在が2人の関係に影を落としてゆく。

 通常、斯様な設定だと“平凡に生きていた者が、銃を手にすることによって道を踏みはずす”という筋書きになるし、それ以外にはまず考えられないのだが、なぜか本作の主人公は、銃を拾う前から頭のネジが飛んでいるのだ。ならば“ナントカに刃物”の例え通りに次々と凶行に走ってもおかしくないのだが、肝心な時に優柔不断なのには呆れてしまう。

 かと思えば終盤近くにはトオルの辛かった過去が顔を出し、いかにも映画の本筋と関係あるかのごとく挿入されるが、ドラマを盛り下げる結果にしか繋がらない。警察はトオルを疑わしいと思っているが、張り込む様子も無い。

 そして気になったのが、主人公たちが絶えず喫煙することだ。いまどきチェーンスモーカーの若者なんてあまりいないだろう。しかも大学の食堂でもスパスパやっているのには閉口した。いったいいつの時代の話なのか。私が大学生だった頃(つまり、かなり昔)でも、学食では禁煙だったぞ。武正晴の演出は精彩を欠き、ドラマとしての山を作れていない。モノクロで撮っている必然性が感じられないし、一部カラーになるのも効果的ではない。

 主演の村上虹郎は頑張ってはいるが、刑事役のリリー・フランキーと並ぶと格の違いは否めない。ユウコに扮しているのは広瀬アリスだが、別に彼女でなくても一向に構わない役だ。かえって共演の日南響子の方が、“身体を張っている”という意味では印象に残る(笑)。また村上の父親である村上淳も出ているのだが、明らかに損な役回りで脱力してしまった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする