元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ラブレター」

2018-03-25 06:19:30 | 映画の感想(ら行)
 81年作品。にっかつがロマンポルノ10周年記念として製作したもので、スタッフ・キャスト共、成人映画ではなく主に一般映画の枠から起用されている。そのためポルノ映画としてのテイストが薄く、効果的な宣伝も相まって普段は成人映画館に足を運ばない観客を動員し、異例のヒット作になったということだ。だが、出来自体は褒められるレベルには達していない。

 有名詩人の小田都志春は、家族がありながら34歳もの年齢差がある加納有子を愛人として囲っていた。都志春は忙しくてあまり有子に会えないが、その短い逢瀬では二人の愛欲は燃え上がる。やがて彼は妻の介護に専念して、有子とはほとんど会わないようになる。だが、決して彼女を蔑ろにしているわけではなく、有子が知り合いの夫と話しているのを見かけただけで、嫉妬に狂ったりする。



 都志春の気まぐれな行動はエスカレートし、有子と籍を入れたり抜いたりとやりたい放題。さすがに有子も精神のバランスを崩し、入院させられてしまう。詩人の金子光晴と若い愛人との、長きにわたる関係を取材した江森陽弘のノンフィクション作品の映画化だ。

 いくらでも扇情的に盛り上げられるネタながら、監督の東陽一が成人映画のスキームをあまり理解していないためか、どうも印象は平面的である。かと思うと、都志春の本妻が絡むエピソード等は変に生々しいタッチを見せる。ただそれは決して“リアリティがある”というプラスの意味ではなく、単に“見せなくてもいい場面に付き合わされた”という不快感が先行する。

 主人公たちが互いに“トシ兄ちゃん”“ウサギ”と呼び合って子供っぽく振る舞うのも、痛々しくて愉快になれない。山のない展開に終始した後、ラストの愁嘆場を思い入れたっぷりに見せられても、観ている側は鼻白むばかりだ。脚本に田中陽造、撮影に川上皓市という手練れを起用しているにも関わらず、ヴォルテージが上がることはなかった。

 関根恵子(現・高橋惠子)と中村嘉葎雄の演技には、特筆すべきものはない。加賀まりこや仲谷昇といった脇のキャストもパッとせず。なお、封切時の併映は「モア・セクシー 獣のようにもう一度」(加藤彰監督、畑中葉子主演)というものだったらしいが、私は(たぶん)観ていないと思う。あるいは、観ていたけど覚えていないだけかもしれないが・・・・(^^;)。
コメント
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