元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「バイオレント・サタデー」

2018-03-16 06:39:03 | 映画の感想(は行)
 (原題:THE OSTERMAN WEEKEND)83年作品。巨匠サム・ペキンパー監督の最後の映画なのだが、どうにも気勢が上がらない内容だ。前作「コンボイ」(78年)から長いインターバルがあるのは、スタジオ内での同監督の狼藉三昧が問題になったため、一時的に干されたためらしい。とはいえ、それまでコンスタントに撮り続けていた作家が仕事が出来ない状態に置かれると、腕は鈍るという見方も出来るだろう。

 テレビキャスターのジョン・タナーは、ある日、CIAのエージェントであるファセットから、学生の頃からの友人3人がソ連のスパイと内通していることを知らされる。その3人とは、放送作家のオスターマン、医師のリチャード、証券マンのジョセフだ。彼らはKGB主宰の“オメガ”なる組織に属しており、そのうち1人を転向させる計画への協力を持ちかけられる。タナーはCIA長官ダンフォースの独占インタビューを条件にこれを承諾する。



 週末、それぞれの妻を同伴した件の3人がタナー邸に招かれる。家の中には、CIAがセットした隠しカメラやマイクが満載だ。用心のためにタナーは妻子を実家に帰そうとするが、空港で2人が何者かに誘拐されそうになったことから、雰囲気は一気に剣呑なものになる。実は一連の段取りは、妻を殺されたファセットによるCIA当局への復讐であったことが明らかになる。原作はロバート・ラドラムによるサスペンス小説だ(私は未読)。

 冒頭、ファセットの妻が殺される場面がTVの荒い映像で流されるが、これはかなりインパクトがある。しかし、このシークエンスを超える箇所は、それから先は全然見当たらない。なるほど、ペキンパー御大が得意とするスローモーションによるアクション場面はフィーチャーされているし、ケレン味たっぷりの画面分割も展開されるのだが、往時のペキンパー作品と比べると、パワーダウンは否めない。

 話自体が入り組んでいる割には軽量級な印象を受けるし、そもそも“オメガ”の正体も大したことがない。主演はルトガー・ハウアーだが、どうにも煮え切らない演技に終始。他にジョン・ハートやデニス・ホッパー、バート・ランカスターという濃い顔ぶれを揃えていながら、あまり有効に機能させていない。音楽はラロ・シフリンだが、これだけ印象に残らないのは珍しいだろう。

 なお、本作が撮られた翌年にペキンパーは59歳の若さで世を去っている。不摂生な生活が祟ったらしいが、もうちょっと彼の作品を観たかったと思う映画ファンは少なくないはずだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする