元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「はつ恋」

2016-11-06 06:30:56 | 映画の感想(は行)
 2000年東映作品。脚本に難ありだ。シナリオを担当した長澤雅彦はそれまでプロデューサーを生業にしていたせいか、話の組み立て方には慣れていないようで、物語の前提・出発点からして無理がある。もっと別の人材を招聘すべきであった。

 主人公の女子高生・聡夏は春休みに入って早々に母の志津枝が突然入院し、しかも父親の泰仁との気まずい二人暮らしを余儀なくされ、憂鬱な日々を過ごしていた。ある日、母の頼みで彼女が大切にしていた古いオルゴールを探し出した聡夏は、その中から送付されていない一通の手紙と一枚の写真を見つける。



 どうやら24年前に母が父と出会う前に交際していた相手に宛てた、切々としたラヴレターらしい。聡夏は母に内緒でその男・藤木を探し、長年の母の願いを叶えることにする。だがようやく見つけた藤木は、人生に疲れた冴えないオッサンになっていた。聡夏は彼を“母親に相応しい男”に仕立て上げようと画策する。

 だいたい、母親がガンで入院したといっても、死ぬ一歩手前なんてことがわからない時点でわざわざ昔の恋人に会わせようというヒロインの心理が理解不能である。百歩譲って、それが好きな先輩に想いを十分伝えられなかったことの代替行為だということにしても、その結果どういう事態になることを期待しているのかさっぱり分からない。ヘタすりゃ家庭崩壊になって、一番困るのはヒロイン自身じゃないか。

 さらに悪いことに、聡夏に扮する田中麗奈は存在感こそあるものの、表情が単一であり微妙な内面演技などは苦手、つまりはこの頃の彼女は大根だったのである。いくら脇に原田美枝子だの平田満だの真田広之だの佐藤允だのといった多彩な顔ぶれを持ってきても無駄。多少地味でも、辻褄の合わない設定を力技でねじ伏せるほどの演技力を持つ女優を起用すべきだったと思う(でも、それじゃ客が来ないか ^^;)。

 篠原哲雄の演出は本作の前に撮った「月とキャベツ」(96年)や「きみのためにできること」(99年)などと比べて多少進歩しているらしく、まあ見られるレベルにはなってはいるが、今回は脚本がヘボすぎた。久石譲の音楽は彼としては水準の出来である。
コメント
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