元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」

2016-11-02 06:25:06 | 映画の感想(な行)
 (原題:THE NIGHTMARE BEFORE CHRISTMAS)93年作品。監督はヘンリー・セリックだが、作品はプロデューサーであるティム・バートンのものと思って間違いない。

 年に一度のハロウィンの夜。ハロウィンタウンの住人ジャック・スケルトンが一年かけて仕掛けるハロウィンはいつも大成功。ところが、大騒ぎする住人をよそに、マンネリに嫌気がさしたジャックは幽霊犬と一緒に墓場をあてどもなく歩いていた。しかし、いつの間にか迷い込んだ場所は、真っ白な雪とジングルベル、子供たちの笑い声と楽しそうな音楽が響き合うクリスマスタウンだ。初めて見る“真っ当なクリスマス”に魅了されたジャックは、サンタクロースを誘拐して次の年のクリスマスを“ハロウィン風”にすべく準備を開始する。



 言い忘れたが、これはミュージカル仕立てのストップモーション・アニメーション映画である。それまで実写では鼻につくバートンのオタク趣味が、ここでは万人に納得できるように展開されている。はかない夢に向かって邁進する主人公も、彼を慕うギハギだらけの人造美女も、悪の権化の魔人ウーギー・ブーギーも、実写でやればウソ臭くて観ていられないだろう。でもここではすべて許されるのだ。改めてアニメーションの不思議さに驚いてしまう。

 主人公ジャックのキャラクター・デザインをはじめ、各登場人物のグロテスクだがどこか愛敬のある造形は見事。ハロウィンタウンの恐ろしく暗い雰囲気も捨て難い。動きの精巧さ、コンピュータ合成などのSFX処理は素晴らしいの一言だ。そしてダニー・エルフマンの音楽も彩りを添える。

 面白いのは、クリスマスに憧れるジャックとは裏腹に、作者はクリスマスをバカにしているようなところだ。能天気な子供たちがプレゼント貰って喜ぶだけの“本式の”クリスマスより、グロいプレゼントで街中パニックになるハロウィン風クリスマスの方を断然楽しく描いている。このオタクな屈折ぶりがこういう映画ではいいのだ。しかも、映画の中で一番イヤなキャラクターはヘンに説教臭くて芸のないサンタクロースだったりする(笑)。

 筋金入りのオタクも時と場合によってはこんなポピュラリティを持った快作を仕上げてくれる。バートンの特異な才能を見直した一篇。次作「エド・ウッド」(94年)では、さらなる飛躍を見せてくれる。この頃の彼は絶好調だった。
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