元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「シネ・リーブル博多駅」が閉館。

2011-05-20 06:36:12 | 映画周辺のネタ

 去る5月13日、福岡市博多区にあるミニシアター「シネ・リーブル博多駅」が閉館した。同館は99年にオープン。東京テアトル系列の小規模映画館として、大きな映画館では公開されにくい単館系の作品を手掛けてきた。80席と57席の二つのスクリーンを持ち、観客動員の実績は年間約6万人。ここ数年も黒字経営だったが「将来の収益見通しを考慮し、賃貸契約の更新期を迎えたのを機に閉館を決めた」(関係者談)とのことらしい。

 福岡市では近年「シネテリエ天神」や「シネサロン・パヴェリア」といったミニシアターが相次いで無くなっている。残っているのは天神地区の「KBCシネマ」だけになった。単館系作品をコンスタントに上映している映画館としては他に天神地区の「ソラリアシネマ」があるが、ここは元々東宝系の封切館であり、単館系作品の集客力に比べて劇場規模が大きすぎる。入居しているソラリアプラザビルが入場客数を減らしていることもあり、いつまで存続出来るか分からない。

 ただし、映画ファンとしては観たい作品が上映されればオッケーなのであって、それがミニシアターじゃないとダメだということはないのである。正直言って、今回閉館した「シネ・リーブル博多駅」は場内の環境は良くなかった。極端に小さなスクリーンに高低差のあまりないフロア。一番前の真ん中の席じゃないと真に満足出来る鑑賞が出来ないというのは感心しなかった。しかもロケーションが騒音の大きいゲームセンターの中で、映画館内にトイレもない(ゲームセンターと共用)というのは、観客にとって不都合だ。

 これは前に閉館した「シネテリエ天神」も似たようなもので、飲屋街の中という立地といい、狭い場内スペースといい、どう考えても積極的に足を運びたい劇場ではなかった。「シネサロン・パヴェリア」に至っては市の中心地から遠く離れていて、行くのに一日仕事だったことを思い出す。要するに閉館した映画館は、顧客マーケティングの面から言えば“淘汰されて当たり前”だったのだ。良い映画をやっているから客も来るはずだ・・・・という姿勢は、この不況下では通用しない。

 最近では首都圏においてもミニシアターは苦戦を強いられ、映画館といえばシネマ・コンプレックスの形態が主流になってきたという。これも、シネコンの方がビジネスモデルとして優れていたというだけの話だろう。従来型の映画館が姿を消すことに対して、ことさらに異を唱える必要性もない。

 さて、「シネ・リーブル博多駅」で上映していたタイプの映画は、今後どこで公開しくれるのか。たぶんある程度はシネコンが引き継ぐだろう。具体的には、キャナルシティ博多にあるユナイテッドシネマだと思う。以前より単館系作品を何回か手掛けたことがあったが、新しい博多駅ビルに出来たシネコン「T・ジョイ博多」との差別化を図るために、独自色を出してくるはずだ。単館系作品の公開はその戦略の一つになる。

 だが、いくら何でも「シネ・リーブル博多駅」でのレイトショー作品のような極端にマニアックな映画は、シネコンではやってくれないだろう。総体的に福岡市内での単館系作品の上映本数は減ると思われる。これも時代の流れといえば仕方がないのかもしれない。

 今思い出したが、実は東京テアトル系列の劇場は「シネ・リーブル博多駅」だけではなかったのだ。博多区中洲に「シネリーブル博多」という映画館があった。元は日活系の成人映画館だったが、ミニシアターとして98年に再出発。意欲的な作品展開を見せていた。ところが途中で経営母体が変わったらしく、単なる二番館に成り下がり、2000年にはあえなく閉館。わずか2年弱の命に終わったが、それはいかがわしい(?)歓楽街の真ん中という立地も関係していたのだろう。改めて、ロケーションの重要さを痛感する。
コメント
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