元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

ハインリヒ・シュリーマン「古代への情熱」

2008-07-26 22:00:36 | 読書感想文
 映画「トロイ」でもお馴染みのトロヤ遺跡をはじめ、数々の古代遺産の発掘に功績を挙げたシュリーマンの自伝である。

 中盤以降に次々と紹介される研究の「成果」は、古代ギリシアの美術工芸に詳しくない私としてはピンと来ないが、作者の並はずれた行動力と実行力には圧倒される。彼が子供の頃に読んだトロヤ戦争の物語を成人しても頑なに信じ続け、実業家として発掘に必要な財産と教養を手に入れた後、人生の残り半分を発掘一筋に捧げた情熱。そのバイタリティには驚かされる。

 一番印象に残ったのは「時間を盗むのだ」という一節である。人生で与えられた時間は誰でも限られている。生きるための雑事に費やす日々の時間の中から、いかにして「自分だけの時間」を盗み出すか。豊かな人生を送るには、そのテクニックが不可欠なのだと思う。その姿勢を見習うだけでも、目を通す価値のある本である。
コメント
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