元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ラブ★コン」

2006-08-12 06:50:35 | 映画の感想(ら行)

 目の覚めるような快作である。背の高い女の子と、彼女より10cmも背の低い男子学生が主人公の青春コメディ。この“背の高さがどうのこうの”というのはトシ食った今では取るに足らないハナシなのだが、若い頃にはそれこそ人生の運命を左右するほどの一大事だと思い込んでしまうのだ。しかも、身長というのは努力でどうにかなるものでもない。それと上手く折り合いを付けることが“成長”なのだろうが、本作はそこに至るまでの葛藤と開き直りが実に普遍的に捉えられていて、観る者の甘酸っぱい共感を呼ぶ。

 石川北二監督は特異な映像ギミックで観客を引きずり回すタイプの演出家みたいだが、それが単なる“お座敷芸”にならず全てビシッと決まっているのは、学園ドラマのルーティンをしっかりと押さえた上で、それを効果的なスパイスとして使用しているからだ。ハデな映像処理で悲劇を喜劇に変えられると思い込んで失敗した「嫌われ松子の一生」の監督よりは数段スマートである。

 そしてキャスティングの素晴らしさ。ヒロイン役の藤澤恵麻はかつてNHKドラマ「天花」の超大根演技で世間の顰蹙を買った女優とは思えないほど魅力的。何より、鼻の穴を膨らましたまま大奮闘してもまったく下品にならないのだ(笑)。若手コメディエンヌとして注目株である。相手役の小池徹平も(天然ボケが入った)性格の良さと優しさを前面に押し出したキャラクターで成功。上映前に映画の見所を二人が語るビデオが流されるのだが、まるで映画そのまんまの漫才のようで、実に雰囲気が良い。このまま結婚してもいいのではと思うほどだ(爆)。

 ヘンな転任教師役の谷原“よろしQueen!”章介や、ズラがらみで笑わせる温水洋一、寺島進や田中要次はトンでもない役で登場するし、畑正憲に至っては・・・・(以下語らず ^^;)。とにかく、どいつもこいつも実にオイシイ仕事をさせてもらっている。

 もちろん、爆笑ポイントも数知れず。懐かしめの歌謡曲を使うセンスや、登場人物のカラフルな衣装、そしてテンポの良い関西弁の応酬が滅茶苦茶楽しい。原作は少女漫画らしいが、たぶん漫画の映画化では最も上手くいった部類のシャシンだろう。幅広い層に奨められるラブコメディで、ハッキリ言って観ないと損をする。
コメント (2)
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