元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ツイン・タウン」

2006-08-06 19:26:04 | 映画の感想(た行)
 (原題:Twin Town)97年イギリス作品。 ウェールズの片田舎に住む、3歳違いなのに双子呼ばわりされるジェレミー&ジュリアン(リス・エヴァンズ、リル・エヴァンズ)はコソ泥とドラッグとケンカに明け暮れる街の厄介者。ある日、彼らの父親が街の実力者から請け負った仕事で大ケガしたことで、兄弟は手段を選ばない復讐戦に出る。「トレインスポッティング」の監督ダニー・ボイルが製作総指揮をつとめ、演出はこれがデビューのケヴィン・アレン。

 軽快な音楽に乗って主人公たちの無軌道な生活を描く最初の30分ほどは、典型的な(?)“イギリス製不良映画”の一本かと思わせる。しかし、次第に映画は暗くトーンを変え、単なる能天気な悪ガキだと思っていた主役二人の、狂的な偏執ぶりが前面に出てきて、やがて血で血を洗う仕返し合戦に突入していく首尾一貫性皆無の展開に呆れるばかり。家族は惨殺されるわ、愛犬は首を切断されるわ、ついには敵役は残虐な仕打ちに合う。

 焦点の定まらない、実に後味の悪い映画だが、公開当時の某映画雑誌には“文法に縛られることを嫌っている自由な発想だ”としてこの映画を持ち上げている評論家の文章が載っていた。この評者によると、観客が期待している通りの作劇を取ることは、作者と観客の間に一種の相互補完関係が成立するが、野心的な作家はそのルーティンにとらわれないと主張し、ヒッチコックの「サイコ」を例にあげてこの映画を評価している。バカめ。プログラム・ピクチュアのルールを破壊することによる効能なんてのは、ほとんどの映画ファンは承知しているぞ。要はそれが上手くいったかどうかだ。

 そんな御託を並べる前に、まずこの映画の演出はヘタである。テンポは悪いし、何より各キャラクターが一通り顔を揃えてストーリーが動くまでが滅茶苦茶タルい。ギャグのかませ方も空振りで、ここ一番の盛り上がりがない。全体的に小汚い連中ばかり出てくるのもウンザリだ。さっさと忘れてしまいたい作品である。

 正直言って、私は「トレインスポッティング」や「フル・モンティ」みたいなイギリス下層階級映画は苦手である。ただでさえ地べたを這いずるような生活をしている身にとって、スクリーン上でもサエない連中を見せられてはたまったものではない(マイク・リーやケン・ローチあたりの達者な演出なら別だが)。やっぱりイギリス映画といえば“上流階級優柔不断退廃ドラマ”(?)の方が性に合っとるわい(^^;)。
コメント
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