三原光尋監督による4回目の映画化作品が先ごろ公開されたが(私は未見)、今回紹介するのは92年に作られた3回目の映画化である。面白いのは、公開当初2つのヴァージョンが存在したこと。“一般公開ヴァージョン”と“インターナショナル・ヴァージョン”である。さてどこが違うかというと、一般公開版はR指定、対して私が観た方は成人指定なのである。つまりエッチな場面が長いということだが、正直言って“この程度?”といったレベル。単なる話題作りだったようだ(爆)。
御存知江戸川乱歩の原作を映画化したのは実相寺昭雄監督。昭和初頭の東京の下町で、下宿屋に住む青年(三上博史)が退屈のあまり屋根裏を利用した完全犯罪を考える。犯行は成功したかに見えたが、同じ下宿の住人である明智小五郎(嶋田久作)に見破られる、というストーリー。
実相寺監督作品は好事家の間では評価が高いが、私はあまり買わない(テレビドラマ演出作では面白いものもあるが)。鼻につくケレン味やハッタリめいた田舎芝居風演技が目立ち、胃にもたれてくるのである。
でも、この作品に限っては臭みがよく抑えられており、あまり気分を害さずにすんだ。大時代なセリフ回しや凝りまくったカメラワークもほどほどで、ちょいとSMかがった場面もサラッと流している。キャスティング面では明智役の嶋田がいい雰囲気を出している。少し考えると三上と役を逆にした方がよいような気がするが、意外性の勝利といったところだ。宮崎ますみ扮する狂女が出てきたときには、ちょっとヤバイと思ったものの、演技を暴走させてなくてホッとした。
しかし、観客はわがままなもので、あまりマトモだと物足りなくなってくるのだ。やはり主人公の内面の狂気のえぐり出し方が足りない。過剰なナレーションでごまかしているのがミエミエである。そして何より、屋根裏の造形が不満だ。暗くうっそうとした、それでいて人間の暗い欲望を暗示させる凶々しい魅力をたたえた場所にしてほしかった。意味なく明るいのも困りものだ。
この原作は過去に70年と76年に映画化されているが、興味深いのは76年の田中登監督版だ。日活ロマンポルノの一本として作られたものだが、キネマ旬報のベストテンにも入ってるし、スチール写真見ただけでその異常性と耽美性がうかがえる。機会があれば観たいものだ。
御存知江戸川乱歩の原作を映画化したのは実相寺昭雄監督。昭和初頭の東京の下町で、下宿屋に住む青年(三上博史)が退屈のあまり屋根裏を利用した完全犯罪を考える。犯行は成功したかに見えたが、同じ下宿の住人である明智小五郎(嶋田久作)に見破られる、というストーリー。
実相寺監督作品は好事家の間では評価が高いが、私はあまり買わない(テレビドラマ演出作では面白いものもあるが)。鼻につくケレン味やハッタリめいた田舎芝居風演技が目立ち、胃にもたれてくるのである。
でも、この作品に限っては臭みがよく抑えられており、あまり気分を害さずにすんだ。大時代なセリフ回しや凝りまくったカメラワークもほどほどで、ちょいとSMかがった場面もサラッと流している。キャスティング面では明智役の嶋田がいい雰囲気を出している。少し考えると三上と役を逆にした方がよいような気がするが、意外性の勝利といったところだ。宮崎ますみ扮する狂女が出てきたときには、ちょっとヤバイと思ったものの、演技を暴走させてなくてホッとした。
しかし、観客はわがままなもので、あまりマトモだと物足りなくなってくるのだ。やはり主人公の内面の狂気のえぐり出し方が足りない。過剰なナレーションでごまかしているのがミエミエである。そして何より、屋根裏の造形が不満だ。暗くうっそうとした、それでいて人間の暗い欲望を暗示させる凶々しい魅力をたたえた場所にしてほしかった。意味なく明るいのも困りものだ。
この原作は過去に70年と76年に映画化されているが、興味深いのは76年の田中登監督版だ。日活ロマンポルノの一本として作られたものだが、キネマ旬報のベストテンにも入ってるし、スチール写真見ただけでその異常性と耽美性がうかがえる。機会があれば観たいものだ。


