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「市民連続講座 スウェーデンの新たな挑戦:緑の福祉国家」シリーズは2月6日の「緑の福祉国家19 オゾン層の保護への対応 ②」 以来、2ヶ月半以上にわたって中断していましたが、今日から再開します。今日のテーマは緑の福祉国家(エコロジカルに持続可能な社会)に向けた「税制改革:課税対象の転換」です。
スウェーデンは、日本や米国のような直接税中心の国ではありません。むしろ、税収の多くは付加価値税(日本で言う消費税)などの間接税によるもので、国税としての所得税は、一部の高額所得者にだけ単一税率(95年に20%から25%へ)で課税しているにすぎない「間接税国家」です。
★付加価値税(日本で言う消費税)
スウェーデンの付加価値税は、次の図に示したように、1960年に「取引高税」として4.2%の税率で導入され、90年には25%(食料品は12%、書籍は6%、このほか医薬品などには軽減税率が適用され、住宅は非課税)で世界最高水準となり、現在に至っています。
★1990年の税制構造改革
1990年6月、スウェーデンの国会で、税制改革法案が可決されました。この法案は92年のEC統合(実際には95年にEU加盟)を意識しながら、これまでに築き上げてきた「高度福祉国家」を21世紀に向けて立て直すことをめざす画期的なものでした。
新しく成立した新法では、全体の約85%にあたる年収18万クローナ(当時は1クローナ約25円、約450万円相当)未満の国民には、所得税として30%の「地方所得税」だけが課税されるものでした。それ以上の収入のある「高額所得者」は、これに加えて20%の国税を払うことになりました。法人税は52%から30%に減税されました。
★その後の増税
スウェーデンは財政再建のために、「歳出の削減」と「増税」を実施しました。歳出の削減と同時に、景気回復のために経費の中身を次の4分野に大きく転換させました。
①教育への投資
②IT(情報技術)インフラの整備
③環境政策
④強い福祉
そして、増税です。スウェーデンの所得税は大多数(全体の約85%)の国民が納税する「地方所得税」と高額所得者が納税する「国の所得税」からなっています。95年から「地方所得税」の税率は30%+200クローナと若干増税され、高額所得者に課税される「国の所得税」の税率は20%から25%に引き上げられました。
この政策が実り、2000年以降、スウェーデンは好調な経済を背景に、上記の4つの分野でめざましい進展を遂げました。その成果は国際機関が公表する様々な分野の国際ランキングでトップ5に入っています。
★高い税金に対する国民意識
日本では、スウェーデンの福祉政策は「高福祉高負担」として知られていますが、スウェーデンでは、高い税金はすべて国民に還元されるのが当然と考えられており、福祉や医療だけでなく、義務教育から高校、大学、成人学校に至るまで教育費もすべて無料で、落ちこぼれても一生涯でやり直しがきく教育体制が原則となっています。
そのせいだと思いますが、国民にアンケート調査を行ってみると、税金が安くなるよりも医療・福祉・教育システムが整備されている方がよいという回答がえられるのです。
ちょっと古い資料で、しかも字が小さくて恐縮ですが、日本の電通総研・余暇開発センター編「世界23カ国 価値感データブック」(同友館 1999年10月発行)の中に、「増税容認」と「もし仮に戦争が起こったら、国のために戦うか」という問に対する回答があります。いずれの回答でも、スウェーデンと日本の位置が対極にあることが示唆されていて興味深いと思いました。
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