環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

今日の決断が将来を原則的に決める

2007-04-04 14:35:04 | 市民連続講座:環境問題
   

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昨日のブログで、 3月30日に開業した「東京ミッドタウン」を取り上げました。この機会に「巨大構造物と環境問題の関係」を考える材料を提供しましょう。まずは、この問題を考えるときの原則をお話します。

今、私たちが本気で「環境保護のための行動」と「持続可能な社会の実現をめざした行動」を起こさないと、私たちの子供や孫が生きる世界が大変なことになりますし、対応を先に延ばせば延ばすほど、社会的なコストが増大することになります。これから、このことを説明します。次の図をご覧ください。

私たちが、今、直面している環境問題は「今に原因があるというよりも、私たちが数10年前に決断したことに原因がある」ということです。私たちが経済成長の拡大を求めて投資した生産設備や、そこから生産された生産物、インフラ・ストラクチャーとしての巨大ビルや高速道路などの構造物から生ずる「環境の人為負荷」の蓄積が今起こっている環境問題の主な原因なのです。

つまり、数10年前に建設した工場等の構造物が生産活動を通じて環境へ様々な廃棄物(ガス状、液状および固体状の廃棄物)を環境に排出してきました。また、私たちも生産活動から得た生産物を消費することにより、環境を汚染し、最終的に廃棄物を環境に放出してきました。そして、それらが大気を汚染し、水を汚染し、土壌を汚染してきたのです。

ですから、環境問題は人間活動に伴う資源や原料の供給量、エネルギーの消費量、水の消費量に左右され、これらの量が大気汚染物質や水質汚濁物質の排出量、廃棄物量を原則的に決めてしまうのです。このことがはっきり理解できれば、「今日の決断が数十年先の環境問題を原則的に決めてしまう」という経験則が理解されるはずです。

この経験則は人口の大小や生産規模の大小にかかわりなく、すべての国に共通する普遍の原理・原則です。この原理・原則は環境問題だけでなく、社会システム、インフラ・ストラクチャー、経営などほとんどすべての社会事象に適用可能だと思います。

つまり、私たちが、今、必要だからということで、全体を考えずに、巨大な構造物をどんどん作っていきますと、この原理・原則により、これから10年後、30年後、50年後……の環境問題が原則的に決まってしまうということです。何が決まってしまうかと言いますと、「資源/原料の供給量」、「エネルギーの消費量/大気汚染物質の排出量」、「水の消費量/水質汚濁物質の排出量」、「廃棄物の量」、「土壌汚染の程度」などです。
 
現在のように、資源の制約、エネルギーの制約、環境の制約により人間の活動が環境の許容限度に近づいてるような時に、このような巨大構造物をつくってしまいますと、どこかを犠牲にしない限り、巨大な構造物を設計どおりに機能させることができなくなります。

巨大な構造物はその一生(建設時、使用時、廃棄時)を通じて原則的に大量のエネルギー(最近の構造物では、特に電気)を要求し、大量の廃棄物を生み出します。日本は資源やエネルギーが極めて乏しいため、それらを外国から持ってこざるをえません。多くの場合、発展途上国に依存することになります。

発展途上国の人々との共存を考えると、私たちはこれまでの産業経済システムの方向性を変えなければ行き詰まるのではないかと思います。これは難しい議論ではなく、ごく当たり前の話です。


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06年のODA実績 GNI比 スウェーデン1位、日本18位

2007-04-04 11:01:57 | 政治/行政/地方分権


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今朝の朝日新聞が経済開発協力機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)が4月3日に発表した「2006年の主要国のODA実績」を伝えています。国別では、DAC加盟の22カ国中、ODA実績(総額)で米国、英国に次いで3位に転落したそうです。日本が3位以下になるのは82年以来24年ぶり。スウェーデンは7位。ODA額の対国民総所得(GNI)比では、スウェーデン1位(1.03%)日本18位(0.25%)です。


「GNI比 0.7%」の援助目標は1980年の国連決議に盛り込まれ、当初の達成期限は85年でした。92年の地球サミットの行動計画「アジェンダ21」も早期達成がうたわれましたが、2001年時点の達成国はデンマーク、ノルウェー、オランダ、ルクセンブルグ、スウェーデンの5カ国だけでした。日本は19位(0.23%)でした。

人口が日本の10分の1のスウェーデンはODA(途上国への政府開発援助)でも活発に貢献しています。次の毎日新聞をご覧ください。

スウェーデンのセーベセーデルベリ外務次官は当時の毎日新聞のインタビューで、「スウェーデンは20年前(1969年)に国会でGNPの1%を開発協力にあてることを決議し、15年前(74年)にその目標を達成した」と答えています。この目標設定はスウェーデンが独自の判断で決め、その目標に向けて実行してきたのです。そして、1980年になりますと、国連が「GNI比 0.7%」の援助目標を掲げます。スウェーデンは80年以降は国連の「GNI比 0.7%」を維持してきました。

ですから、国連が掲げた「GNI比 0.7%」という援助目標を判断基準にすれば、スウェーデンは1974年から2006年まで32年間、国連の目標を達成していたことになります。一方、日本はGNI比が89年当時(当時はGNP比)の状況と06年の状況が数字の上でほとんど変わっていないことからも想像できますように、国連の目標を達成したことがないのです。



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IT革命と環境問題 ③ 「IT革命」への期待と懸念 

2007-04-04 06:58:55 | IT(情報技術)


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3月30日のブログで、 世界経済フォーラムが07年版「世界IT報告」を発表したことをお知らせしました。ITの活用状況はスウェーデンが2位、日本が14位でした。この結果を頭に置きながら、「エネルギーや環境問題」に対する ITの特性を考えてみましょう。  



スウェーデンのように「緑の福祉国家(生態学的に持続可能な社会)の実現」を21世紀前半社会のビジョンとする国では、①の特性に期待をかけます。そして、2月4日のブログ次の図が示すような成果をあげています。


しかし、日本のIT革命は、4月2日のブログ4月3日のブログが示すように、「現行経済の持続的拡大(持続的な経済成長)」という暗黙の了解のもとでの、「景気刺激策」や「経済発展の起爆剤」としての期待ですから、②の特性が導き出される可能性が高くなります。 

ITのインフラが十分に整備されれば、多くの取引がネット上で行なわれるようになります。保険契約、銀行取引、音楽・ビデオ配信、新聞・書籍の配信、電子決済などは、すべての取引がネット上で完結するので、効率化や省エネ化を図ることができますが、「モノ」の輸送だけはネット上では完結できません。  

物流システムは、IT革命がいくら進もうとも、実体経済のなかでかならず重要な地位を占めます。消費者や事業所への配送ニーズは、これまで以上に高まるでしょう。したがって、輸送エネルギーがこれまで以上に増加し、2月17日のブログ「経済、エネルギー、環境の関係」で書いたように、社会全体のエネルギー消費量を増加させる可能性があります。 


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