環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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緑の福祉国家24 エネルギー体系の転換③ GDPと一次エネルギー消費のデカップリング

2007-04-24 11:26:30 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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スウェーデンのエネルギー体系の転換プログラムは1980年3月の「原発に関する国民投票の結果」とそれに基づく同年6月の国会決議にさかのぼります。この時の転換プログラムは冷戦体制下における福祉国家スウェーデンが「脱原発をめざす一国だけのエネルギー政策」で、昨日のブログで書いたように、政治主導の段階的廃止計画でした。

しかし、緑の福祉国家(生態学的に持続可能な社会)を支えるエネルギーの転換政策は「緑の福祉国家の実現」というビジョンを掲げた1996年9月17日のぺーション首相の施政方針演説に基づき策定され、1997年および2002年6月に国会で承認されたエネルギー政策に基づくものです


★電力開発の変遷

脱原発政策は国の「現在の電力状況」および「将来の社会のあり方」に直結します。そこで、スウェーデンの考え方を知る上で電力開発の変遷を概観します。次の図は電力開発の推進力の変遷をまとめたものです。1990年以前とそれ以降の推進力に大きな相違があることがおわかりいただけるでしょう。


次の図は前図に示した電力開発の推進力の変遷に合わせて、行われてきた「エネルギー分野の環境への配慮」をまとめたものです。ここでも日本のエネルギー分野の環境への配慮と大きな相違があることがおわかりいただけるでしょう。

ここで重要なのは「④エネルギーの総需給量の圧縮」です。その結果、上の図にも書かれていますように、最終エネルギー消費は1970年から97年までの27年間ほとんど横ばいでした。この間、GDPは着実に成長しています。


★「GDP」と「一次エネルギー消費」のデカップリング

下の図は「GDP」と90年代の好調なスウェーデン経済を支えた「最終エネルギー消費」の推移の関係を示しています。

この図はスウェーデン統計局が作成し、公表した図です。1996年までしか表示されていませんが、スウェーデンエネルギー庁の資料で足りない部分を補えば、最終エネルギー消費の部門別割合は産業部門では70年の41%から2000年の39%へ減り、民生部門では44%から36%へ減りましたが、運輸部門は15%から23%に増えました。

ここに、「GDP」と「一次エネルギー消費」のデカップリングの実現の兆候を見ることが出来ます。これらの事実は「経済」と「環境」はトレード・オフの関係にあるとするこれまでの通説が必ずしも正しい説ではないことを示唆するものです。
 
このことは、スウェーデンの将来のエネルギー政策を考えるうえで重要です。スウェーデンのエネルギー政策に対する論理は明快です。21世紀にめざすべき「緑の福祉国家」は、現在の市場経済システムを維持・拡大する方向にはあり得ないので、現在の市場経済システムを支えている原子力や化石燃料は「緑の福祉国家」を支えるエネルギー体系にはふさわしくないというものです。



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