環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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緑の福祉国家23 エネルギー体系の転換② 原発廃棄 「政治主導」から「電力会社主導」へ

2007-04-23 04:32:02 | 市民連続講座:緑の福祉国家


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2002年3月15日、スウェーデン政府は新たなエネルギー政策を発表しました。このなかで、原発の段階的廃止をめぐって新しい考え方が提案されました。これまでの政治主導による原発の段階的廃止ではなく、政府が電力会社と交渉・契約し、電力会社に市場原理に即した自由な形で原発廃止を促進させる方法です。

この方法では、原発を保有する電力会社がそれぞれ、政府と交渉し、原発による発電総量(限度)を決め、その範囲で電力会社が自主的に廃止ペースと原子炉の廃止順序を決め、原発を段階的に廃止していくことになります。政府と契約した原発の発電総量に達した時点で、原発による発電を停止して、原子炉を廃止します。

この方法には、原発廃止の最終期限がわからないという難点はありますが、政府や国民にとっては、原子炉廃止にともなう巨額の賠償金の支払いが不要になること、電力会社にとっては政治的に不安な要素が少なくなる、という利点があります。
 
1979年の米国スリーマイル島原発事故を契機に、80年3月の「原子力に関する国民投票」の結果と、それに基づく同年6月の「国会決議」に端を発したスウェーデンの「原発の段階的廃止計画」は、今回の新方針により事実上「政治主導」から「電力会社主導」に変わったことになります。

政治主導の段階的廃止計画は、冷戦体制下における福祉国家スウェーデンの一国だけのエネルギー政策でしたが、この20年間に国際情勢は一変しました。スウェーデンは1995年1月1日にEUに加盟し、97年には「電力自由化のEU指令」が発効しました。その結果、電力自由化が進展して、電力市場や電力網は拡大し、もはや一国のエネルギー政策を一国の事情だけでは決定できないほど、国際情勢は変わってしまったのです。

原発の段階的廃止計画の「政治主導」から「電力会社主導」への転換は、国際社会の潮流の大変化という現実を背景とした、スウェーデンの現実的な新たな政策の進展といえるでしょう。



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