環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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日本はほんとうに「省エネ」国家なのか? 評価基準の見直しを!

2007-03-17 14:55:20 | 原発/エネルギー/資源


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今日のブログのカテゴリー「えっ、どうして」では、タイトルに掲げた「日本はほんとうに『省エネ』国家なのか?」を検証してみたいと思います。

まず、最初の図をご覧下さい。図の左側はご存じ安倍首相の著書「美しい国へ」の表紙で、図の右側は中川秀直・自民党幹事長の著書「上げ潮の時代」の表紙です。


安倍首相は「美しい国へ」の156ページで、つぎのように書いておられます。
また、もっか中国で深刻化している環境問題にたいしても、我が国が経験し、培ったノウハウを積極的に提供していくべきであろう。中国は世界第2位のエネルギー消費国であるが、残念ながらエネルギー効率の現状はきわめてよくない。その点、日本の省エネルギー技術は先進国のなかでも抜きんでている。この分野の協力は、中国経済にとっても、また世界にとっても大切なテーマだ。

また、安倍首相は2007年1月26日に行った「施政方針演説」で、「世界最高水準にある我が国のエネルギー、環境技術を活用し、中国を始めとするアジアに対し、省エネ・環境面での協力を進めます」とも述べておられます。

一方、中川幹事長は著書の「はじめに」の4ページで、つぎのように書いておられます。
「これ以上の経済成長は地球環境に負荷をかける」
ならば、世界に冠たる日本の環境技術で今後生活水準が上がる国でも、経済成長と環境保全を両立できるようにすればいい。

つまり、安倍首相も中川幹事長も、さらに言えば、最近になっても、「世界に冠たる省エネ技術とか環境技術」という表現を好んで使う政治家、評論家、マスメディアに共通する誤解は「公害」と「環境問題」の混同、「効率化」と「省エネ」の混同に基づくものです。そうでなければ、それらの人たちは、1970年代の「オイルショックの頃の日本の優れた省エネ技術」以降、思考停止が続いているのではないでしょうか。

さて、表題に掲げた「日本はほんとうに『省エネ国家』なのか? 評価基準の見直しを!」に対する回答が1997年7月12日の毎日新聞(夕刊)の一面トップに出ています。



この記事は「地球温暖化の主因となる二酸化炭素(CO2)の排出量について、過去約20年間の増加率は先進7か国の中で、日本が最も大きいことが12日、米国オークリッジ国立研究所のデータで明らかになった。 日本はこれまで『CO2 の削減につながる省エネ技術は世界一』と豪語してきたが、このデータは日本の温暖化対策が他国に比べ、大幅に遅れていることを示している」と報じています。

これまで、日本のエネルギー関係者や政策担当者、エコノミストの多くは、「わが国の省エネは世界の最高水準にある」という趣旨の発言を繰り返してきました。この場合の根拠は「家電製品1台当たりの消費電力」、「主要産業におけるエネルギー消費原単位」、「GNP(GDP)当たりのエネルギー消費量」などで表されるような相対的な数値に基づくものです。

日本の省エネ論は工学的発想に基づく、「技術による省エネ」が中心で、極めて狭義の省エネ論です。技術による省エネは重要ではありますが、社会全体の省エネ化という“社会的目標による上限”が設定されない限り、生産規模の拡大や製品台数の増加により省エネ技術の効果は増大するエネルギー消費に吸収され、十分に生かされません。

エネルギー消費量の増大は環境への負荷を高めるので、「最終エネルギー消費の増大」が問題にとなります。

ですから、これまでの「技術による省エネ(相対的な数値)」に基づく省エネの評価ではなく、「国全体の最終エネルギー消費の伸びをいかに抑えたか(絶対的な数値)」を“省エネの目安”とすべきなのです。「省エネ評価基準の変更」により、日本はこれまでの「見掛上の優等生の座」を降りることになります。その結果、私たちは日本のおかれた現状をはっきりと目にすることができるはずです。

この記事の最後で、環境経済に詳しい佐和隆光・京大経済研究所長は「日本が真剣に省エネに取り組んだのはオイルショックの時だけ。何が問題であったのか明らかにして京都会議の議長国としてリーダーシップを発揮して欲しい」と話しています。

ちなみに、日本の最終エネルギー消費は1970年の2112兆キロカロリーから95年の3588兆キロカロリーに漸次増加したのに対し、スウェーデンの最終エネルギー消費は、1970年が457兆ワット時、95年が390兆ワット時で、90年代に入ってやや増加する傾向が見られましたが、過去25年間この範囲に保たれていました。

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 「省エネルギー」の考え方(11/27) 

私には上の記事の内容のほうが、「安倍首相や中川幹事長の記述」より適切だと思います。合わせて、2月17日の私のブログ「経済、エネルギー、環境の関係」に掲げた最新の各種情報をご覧下さい。

特に、安倍首相や中川幹事長のような日本の政治のリーダーには日本の技術の意味するところを十分に理解して行動計画を立てて欲しいと思います。

私の基本認識は、いうまでもなく、昨日のブログで書いた日本社会には「効率化」と「省エネ」の混同があること、「効率化」よりも「資源やエネルギー消費量の抑制」が重要であることに基づくものです。

そして、1973年以来30余年にわたって日本の技術をウオッチしてきた私の結論は「日本はさまざまな省エネルギー技術(省エネ要素技術)を有する国ではあるが、省エ国家ではない」、「日本はすぐれた公害防止技術を有する公害対策先進国ではあるが、環境先進国とは言いがたい(たとえば、世界経済フォーラムの環境ランキング 2002では、日本は50.5で62位)」というものです。
   


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