本という名の、オブジェ (2)

2019-06-26 | 日記

           

竹久夢二の装画・装幀作品集『春の夜の夢』(800部特装限定版412番 昭和43年 龍星閣刊) 。竹久夢二 (1884-1934) が約30年間に描いた書籍、雑誌、音符誌などの装画350図を収録する。「夢二はその51年の生涯を全く装本美術 (装画、装幀、挿絵) に終始したといってもよい。したがって本書は、夢二の仕事の本領を集めたものである」とある。そして「編集者付記」に発行者の澤田伊四郎 (龍星閣創業者 1904-1988) はこんな風に書いている。

装画は書物の顔である。その表情は書物のいのちをささえる。夢二の装画は、いつも書物を美しく生かしてきたが、本書の一つ一つは、装画である以上に、夢二のいう「内的生活の感覚」を写した心象画ともいうべきであろう。
したがって『春の夜の夢』は、かつての日、若い人々が、夢と希望と哀感をこめて読みふけった数々の書物の装いであり、晴着でもある。そのころの少年少女は、いまどこに、健在であろうか。多彩にくりひろげられる絢爛たるこれらの抒情画は、ほのかに過ぎた春の夜の夢を、いまいちど思いかえさせるであろう。

写真は秩の表である。「夢と希望と哀感をこめて」踊っている3人はクロスの切り絵になっていて、躍動感ある造形になっている。本体は皮革装幀で、天金。勿論、夢二の署名は無い。
アメリカの現代作曲家モートン・フェルドマン (1926-1987) のCD『ロスコ・チャペル』を掛けながらこの本を開いている。30年くらい前から気にかけていたCDだったが、やっと手にいれることができた。そんなには夢中になって探してはいなくて、ま、出会ったら程度に考えていて、幸運にも出会ってしまって、今日に届いたのである。何と言ってもこのCDのジャケットがロスコの絵なのである。閑話休題。ということで、昨日のブログに続いて「本という名の、オブジェ」になった。ここに夢二の「ゆうぐれかた」という詩が載っているのでここに写しておく。

                     やくそくもせず

                     しらせもなしに

                     ひがくれる

            
                     やくそくもせず

                     しらせもなしに

                     なみだがでる

                     ゆうぐれ

 


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2 コメント

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夢二 (みずすまし亭)
2019-06-27 17:34:58
「春の夜の夢」並装版は見たことがあるけれど、特装版があったのですね。知らなかったなぁ。
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Unknown (m.sakai)
2019-06-27 23:31:52
今度、お見せ致しましょう。
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