アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

2017年新日本フィルの第9

2017-12-17 20:00:00 | 音楽/芸術

今年も第9の季節がやってきた。

師走も後半戦となると毎日のように第9の演奏会が催される東京。在京オケは主に7楽団あるらしいが、そのどのオーケストラもこの時期にベートーヴェンの演奏を行う。こういった習わしは日本だけだと聞くが、よくよく考えてみれば贅沢な話だ。ベートーヴェンの交響曲自体、演奏会のプログラムから減少している昨今、これだけ集中して実演を聴くことができることの有難さを忘れがちだ。学生時代から、朝比奈隆のベートーヴェンで育ったアントンKは、朝比奈の晩年には大阪で大フィルの第9が恒例となったが、今世紀に入ってからは、在京オケの第9演奏会に出向くことにしている。この辺の印象は別の機会に譲りたいが、今年は色んな意味で新しい発見があり、アントンKの心の支えとなっている崔文洙氏率いる新日本フィルの演奏会に一年の感謝を持って出向くことに決めていた。本音を言えば、複数回演奏のある第9のうち、1回でもよいから音楽監督である上岡氏に振って欲しかった。一昨年聴いたとはいえ、昨年から今年にかけてのオケとの疎通は目を見張るものがあり、以前の演奏とは違った、いや全く別の印象の第9が聴けたかもと思うと少々残念なのだ。

しかし、今はそんな想いもどこかに飛んで行ってしまうくらいの好演に胸が躍っている。 マルク・アンドレーエという指揮者。若手指揮者が続いたが、今年は巨匠指揮者の登場とパンフのクレジット。不勉強のアントンKには、お初の指揮者だったが、こと第9に関しては、見通しの良いすっきりした演奏だったように思っている。スラッとした立ち姿に指揮棒を持たず、両手を十分使っての指揮振りに、オーケストラは敏感に反応し具現化する。ビブラートを最小にして、ロングトーンの音量にも変化を付ける奏法は、ピリオド奏法のように感じる。こんな印象だから、アントンKは第1楽章の出のところから、もうやられてしまった!弦楽器群のPPの六連符の刻みがはっきり聴き取れ、その上に第1Vnの主題が鋭く入ってくるのだ。ここの伴奏は、おそらくPP指示ではないだろう。音符の粒が揃っていて音楽の土台がしっかりしているのだ。ただ展開部の音楽が大きくなった箇所では、この奏法の影響かはわからないが、各声部が聴きとれる反面、音楽がこじんまりした印象を持った。逆にスケルツォ主部などは、こういった短く引き締まった音色が生かされ、ティンパニの雄弁さと相まって、実に爽快な気分にさせてくれた。大好きなアダージョでの木管楽器群の好演は目を見張るし、歌手たちの熱演も心を熱くさせた。合唱団は特にPPでのハーモニーが美しかった。

長年に渡って実演に触れてきたベートーヴェンの第9交響曲。今年は新日本フィルハーモニーのまた新たな音色を感じて第9に触れ、そして終えられたよう思う。中でも、コンマス崔文珠氏率いるVnの美しさ。特にスケルツォ中間部や、アダージョのメインテーマの情感は、今回の演奏では白眉だったのではないか。今も思い出すと感動で背筋にシビレが走る。

新日本フィルハーモニー交響楽団 ハートフルコンサート2017

J.S.バッハ 目覚めよと物見らの呼ぶ声あり  BWV645

J.S.バッハ 幻想曲とフーガ ト短調 BWV542

ベートーヴェン 交響曲第9番 ニ短調「合唱付き」OP125

指揮 マルク・アンドレーエ 

ソプラノ  森谷真理

アルト   山下牧子

テノール  大槻孝志

バルトン  久保和範

合唱    栗友会合唱団

合唱指揮  栗山文昭

コンマス  崔 文洙

2017年12月15日 東京サントリーホール