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「本屋さんで待ちあわせ」 その18 三浦 しをん

2017年12月26日 00時12分33秒 | 本の紹介(こんな本がある)
 「本屋さんで待ちあわせ」 その18 三浦 しをん  大和書房 2012年

 読まずにわかる『東海道四谷怪談』 その3
 第二夜 伊右衛門 悪の魅力 その1 P-132

 『仮名手本忠臣蔵』を少し知っておくと、『東海道四谷怪談』をより楽しめる。
 『忠臣蔵』は、「赤穂浪士が吉良邸に討ち入りし、主君・浅野内匠頭の敵を取る」という、史実に基づいたストーリーだ。いま読むと、「忠義一本槍な生き方(=武士社会)への多大なる疑念がこめられている」と解釈することも可能な物語なのだが、まあ、古臭く大時代な話だと感じる人もいるだろう。

 なんで、自分の生活や命を犠牲にしてまで、バカ殿のために仇を討たねばならんのだ、と。『四谷怪談』は『忠臣蔵』のパロディー、「忠臣にはなれなかった(なりたいなんて毛一筋も思わなかった)人々の話である。『四谷怪談』の作者・鶴屋南北は明らかに、「主君のために命をかけて仇討ちするなんて、古い。時代遅れだ」と考えていたと見受けられる。

 それも当然だろう。『仮名手本忠臣蔵』の初演は、寛延元年(1748年)。『東海道四谷怪談』よりも、77年もまえにできた作品なのだ。いま(2009年)から77年まえといったら、1932年(昭和7年)だ。昭和7年の感覚で、たとえば「髪の毛を茶色く染めるなんてとんでもない!」と言ったところで、現在の若者は当然聞く耳を持たない。習慣や常識や価値観は、わずか数十年で大きく変動する。