民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

語り手のわたしと聞き手のあなたが
一緒の時間、空間を過ごす。まさに一期一会。

「本屋さんで待ちあわせ」 その20 三浦 しをん  

2017年12月30日 23時23分08秒 | 本の紹介(こんな本がある)
 「本屋さんで待ちあわせ」 その20 三浦 しをん  大和書房 2012年

 読まずにわかる『東海道四谷怪談』 その5
 第三夜 ワルが際立つ名台詞(めいぜりふ) その1 P-134

 『東海道四谷怪談』の主人公・民谷伊右衛門は浪人だ。伊右衛門が仕えていた塩谷(えんや)家の殿さまは、殿中で高野(こうや)氏に切りかかった咎で切腹、お家は取り潰しになった。そのため、伊右衛門は職を失ってしまったのである。世間では、塩谷家の浪人たちが主君の遺恨を晴らすため、高野家に討ち入りする準備を進めている、ともっぱらの噂だ。

 観客はここで、「ははぁん」と思う。「この劇は、『忠臣蔵』の設定を借りて進行する話なのだな」と。
 江戸時代には、実際の事件や実在の人物を、劇でそのまま取り上げることが許されていなかった。逆に言うと、人物や団体の名称をちょっと変えれば、なにを上演しても基本的にはお目こぼしされた。このへんが、江戸時代人のおおらかというかいいかげんなところである。