民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

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「本屋さんで待ちあわせ」 その6 三浦 しをん  

2017年12月02日 00時09分32秒 | 本の紹介(こんな本がある)
 「本屋さんで待ちあわせ」 その6 三浦 しをん  大和書房 2012年

 キュリー夫人の暖房術 その2 P-25


 痛いし重い。顔面を直撃した本をなんとか払いのけようと頭を振り、そこで私はふと気づいた。痛いし重いが……、すごくあったかい!
 全身になだれ落ちた本が重石(おもし)となり、いい塩梅に布団に体を密着させてくれるのだ。ふわふわした隙間がないから、体熱が逃げない。ものすごくぴったりフィットした、高性能の寝袋(しかしすごく重い)に包まれているかのようだ。

 キュリー夫人、やっぱりあなたは偉大です!椅子を載せて寝たのも、「気のせい」に期待したわけなんかじゃなく、物理学的(?)辛抱遠慮に基づく行いだったのですね……!

 本は暖房がわりになる、ということを知った。もしいまポックリ死んでしまったら、死体発見者は私の死因を凍死と圧死のどちらと判断するのだろう、と考えながら、本を全身に載せて気持ちよく寝た。

 追記:その後、『キュリー夫人伝』(エーヴ・キュリー著/河野万里子・訳、白水社)も読んだ。壮絶なまでの研究一直線ぶり(大人向けの伝記でも、やはり椅子を載せていた!。彼女は名声のためではなく、純粋に好奇心に突き動かされて研究した。偉大な人間は、ごくたまに実在する。