民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

語り手のわたしと聞き手のあなたが
一緒の時間、空間を過ごす。まさに一期一会。

「葬式は、要らない」 その11 島田 裕巳

2017年07月29日 00時08分22秒 | 生活信条
 「葬式は、要らない」 その11 島田 裕巳(ひろみ)1953年生まれ 幻冬舎新書 2010年

 浄土を模した祭壇 P-67

 こうして葬式と仏教の結びつきは、葬式を華美で贅沢なものにするきっかけを与えた。葬式が最初から神道と結びついたのなら、それは質素なものにとどまったであろう。ところが、仏教では、死者が赴く浄土の世界を、徹底して豪華で美しいものに描き出す志向があった。その影響で、葬式が派手で贅沢なものになっていったのである。

 浄土をそのまま地上に実現しようとしたのは、平安貴族である。平安貴族は、自分たちが実現した豊かで贅沢な暮らしが死後にも持ち越されることを願い、死後の世界を並外れて豊かなものに描き出していった。

 葬式のとき、もっとも費用がかかるのが祭壇である。その祭壇は、浄土を模したものだと言われる。白木の祭壇に代わって、花で祭壇を作ることも多くなったが、やはりそこには死者が赴く浄土の世界のイメージが投影されている。

 庶民は阿弥陀堂を建てることもできなければ、まして浄土式庭園を造ることもできない。葬式の祭壇には、せめて浄土に近づきたいと思う庶民の願望が示されているのである。