民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

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「鬼のおなか」 リメイク by akira

2011年12月18日 00時21分47秒 | 民話(リメイク by akira)
 じゃ、今日は「鬼のおなか」やっかんな。  

 むかぁーしのことだ。

 ある山のふもとに 小さな村があったと。
山ん中には 鬼が住んでいてな、
時々 村に来ては 悪さをするんで、村のモンは 困っていたと。

 ある日のこと、威勢のいい男が 村にやって来て、その話を聞くとな、
 「よーし、オレがやっつけてきてやる。」そう言って、山ん中に入っていったと。

 「おーい、オニー!」男が叫ぶと、
 「オラのこと 呼んだのは お前(めぇー)か?」
大入道みてぇな でっけぇー鬼が 出てきたと。
男はちっともひるまず、鬼を見上げて、
 「おめぇーが村の人間に悪さをするという鬼か。オレがやっつけにきた。」
 「なにを、生意気な!」
鬼は ひょいと 男の首根っこをつかむと、ゴックン って、呑みこんじったと。
だけど、男はちっともあわてねぇで、じっと 呑みこまれるままにしてるとな、
やがて ストーンと 広いとこに 落っこったと。

 (ここが 鬼のおなかん中か、意外と広いとこだな。)

 まわりを見ると、上の方に 青いヒモ、赤いヒモ、黄色いヒモ、
三本のヒモがぶら下がっていたと。
 (うん?このヒモは、なんだんべ?)
 青いヒモを引っ張ってみると、いきなり 鬼が、「ワッハッハッ。」って、笑い出したと。
 (青いヒモを引っ張ると笑い出すのか。)
 どれ、どれ、この赤いヒモはなんだんべ、って、赤いヒモを引っ張ると、
今度は鬼が、「ウェーーン。」って、泣き出したと。
 (なるほど、なるほど、じゃ、この黄色いヒモは)って、黄色いヒモを引っ張ると、
鬼は、「ハックション!」って、くしゃみをしたと。

 (こりゃ、おもしれぇや。)
 (どれ、どれ、三本一緒に引っ張ってみっか。それっ、えいやっと。)
って、力任(まか)せに引っ張っるとな、

 「ワッハッハッ。」「ウェーーン。」「ハックション!」

 「ワッハッハッ。」「ウェーーン。」「ハックション!」

 「ワッハッハッ。」「ウェーーン。」「ハックション!」

 鬼は転げまわって 苦しがったと。

 (どーれ、遊びはこれくらいにしといてやるか。)
男は 最後に くしゃみのヒモを 思いっきり引っ張ってな、

 「ハッ、ハッ、ハクション!」

大きなくしゃみと一緒に、鬼のおなかから飛び出したと。

 「おいっ、どうだ。もういっぺんオレを食ってみっか。」
 「もう、たくさんだ。」
 鬼はあわてて逃げてったと。・・・それっきり、村には出てこなくなったってハナシだ。

  どっとはらい(おしまい)