民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

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「黄鮒」 (きぶな) リメイク by akira

2011年12月22日 01時12分21秒 | 民話(リメイク by akira)
 むかーし むかしのことだ。

 宇都宮の町に、天然痘がはやったことがあった。
天然痘っていうのは、高い熱が出て、顔一杯にブツブツができて、
この病気にかかると、たいがい死んでしまうという、おっかない病気だった。
 町のモンは、なんとかして、この病気を食い止めようとしたけど、
広がるばっかりで、どうにも手がつけられなかった。

 町のはずれに、魚を捕って暮らしている 漁師が住んでいた。
その漁師は、信心深い男で、
朝、出かける時は「今日も無事でありますように」
夕方、帰った時は「今日も無事でありがとうございました」
毎日、神さまに手を合わせて、拝んでいた。

 その漁師の息子が天然痘にかかってしまった。
漁師は、神さまに、一生懸命、お祈りした。
 「息子の病気がよくなりますように」
すると、神さまのお告げがあった。
 「黄色いフナを食べさせてあげなさい、そうすれば、きっと病気はよくなりますよ」

 さっそく、漁師は、田川に釣りにに行った。
釣竿を投げると、すぐ、当たりがあって、上げてみると、でっけえ、黄色いフナが釣れた。
 「こりゃ、珍しい、お告げの通りじゃ、早く息子に食わせてやんべ」

 急いで帰って、息子に食べさせてあげた。
すると、息子の熱が、みるみる下がっていって、
顔のブツブツもとれて、すっかり、元気になった。
 「よかった、よかった、みんなにも分けてあげんべ」
漁師は病気にかかってる、他のもんにも分けてあげて、みんなの病気を治してあげた。

 そうして、宇都宮の町から、天然痘が消えていった。

 それから、町のモンは、病気の守り神にと、
黄色い、張り子のフナを、神棚に飾るようになった、っていう話だ。

 おしまい