民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

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一緒の時間、空間を過ごす。まさに一期一会。

「ちく」 (ちくらっぽ) リメイク by akira

2011年12月25日 00時25分56秒 | 民話(リメイク by akira)
むかし じぃちゃんから聞いた話だ。

 みんなで ひなたぼっこしながら、お茶のみしている時にな。
「こん中で 一番 ちく言うのうめぇーの 誰だんべなぁ?」って、誰かが言ったと。
そしたら「ちく なら オレにまかせろ。」とか、
「いやぁ、ちく なら オレにかなうヤツは いなかんべ。」とか、
みんな「オレが一番だんべ。」「いや、オレだ。」「オレだ。」って言うんだと。
ちっとも自慢できることじゃねえのにな。

「そんじゃ、一人ずつ、ちくの言いっこ すんべ。
そんで 誰が一番 ちく言うのうめぇーか 決めんべ。」ってことになってな。
みんなで ちくの言いっこ したんだと。

 ところが、どいつのちくも たいしたことねえんだと。
 すると、すみっこで じーっとしていた男が、
「どうも オラのちくが一番みてえだな。」って言ったと。
 みんな「なにを!」って顔で そいつをにらんで、
「じゃ、おめぇーのちくは どんなんだ、言ってみろ。」

 んで、みんな そいつのちくを 待っていると、
「あれっ、しまったなぁ、おいてきちまった。」
「何を?」
「オラ、うまい ちくを思いつくと、ネタ帳につけとくんだけどな。
そのネタ帳をおいてきちまった、・・・ちょっくら行って取ってくっから 待っててくれや。」
って、出て行ったと。

 だけど、なかなか 帰って来ねぇーんだと。
「こんだけ待たしといて、たいしたちくじゃなかったら ただじゃおかねぇ。」
「んだ。」「まったくだ。」なんて、言いながら 辛抱強く 待ってたんだけどな。
いつまでたっても戻ってこねぇ。
さすがに みんな だまされたことに気がついた。

「あのヤロー、ちく ぶっこきやがったな。」

 みんなして 二本棒にされたって話だ。

 おしめぇ