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京都で、着物暮らし 

京の街には着物姿が増えています。実に奥が深く、教えられることがいっぱい。着物とその周辺について綴ります。

映画『片思い世界』

2025年04月17日 | KIMURAの読書ノート

『片思い世界』

土井裕康 監督 坂元裕二 脚本 広瀬すず・杉咲花・清原果耶 出演

202544日公開

NHK朝の連続テレビ小説の主役をはった、広瀬すず・杉咲花・清原果耶の3人が主役とは、とりあえず観ねばなるまいと思い、鑑賞して来た。個人的には清原果耶のファンでもあるから、内容はともかくとしてそれだけでも価値があると思っていた。物語のあらすじは、以下の通りである。

相楽美咲(広瀬すず)、片石優花(杉咲花)、阿澄さくら(清原果耶)の3人は、東京の片隅に建つ古い一軒家で一緒に暮らしている。それぞれ仕事、学校、アルバイトへ毎日出かけていき、帰ってきたら3人で一緒に晩ごはんを食べる。リビングでおしゃべりをして、同じ寝室で眠り、朝になったら一緒に歯磨きをする。家族でも同級生でもない彼女たちだったが、お互いのことを思いあいながら、楽しく気ままな3人だけの日々を過ごしている。もう12年、ある理由によって強い絆で結ばれてきた3人には、それぞれが抱える片思いがあった……。(「映画.com」より引用)

結論から言うと、タイトルから想像していた生ぬるい内容ではなく、鑑賞後は爽やかな風と安堵な温もりに心が包まれつつも、作品全体としては心をえぐられたものとなった。「片思い」という言葉は一般的に持つイメージとは全く別のもので、タイトルが一方的に放つ「恋愛ドラマ」でもなければ、「友情ドラマ」でもない、ある種の社会派と言っても過言ではないものであった。なぜ、3人が一緒に住むようになったのか、それがこの物語の大きなキーポイントである。その理由は映画の序盤で出てくるが、恐らく多くの観客はここで息を飲むはずである。そして、なぜこの作品に若手で実力派と言われているこの3人が起用となったのか、納得するはずである。更に言えば、この3人が主役でなければ、成り立たない作品であるともいえる。

と言うのも、物語の設定としては、よくよく考えればあながち無いわけでもないものなのである。そして、それはとても陳腐で安っぽいものと感じる可能性すらあるのである。もしかすると、「ファンタジー」という言葉で括られて終わりとなる危うささえあった。しかし、それらを一切感じさせなかったのは、間違いなく彼女たちの演技力である。しかも私としては、先にも書いたように「社会派」の作品だろうと思っている。

本作品のパンフレットによると、監督は以前からこの3人を共演させて、作品を作りたかったようである。その時点ではどのような作品にするかは全く決まっておらず、3人のスケジュールを押さえてもプロットだけは出来たが、内容が錯綜したと書かれてある。それは決してただ単に主役級の3人を押さえて万歳という話ではなく、彼女たちの実力を知っていたからこその迷いがあったものであることが、行間からにじみ出ている。その監督の想いや苦悩を超えた彼女たちの演技はこの作品を観た人しか分からないと断言できる。監督が3人を共演させてみたいという気持ちが存分に伝わる作品でもある。

蛇足であるが、オタク的視点での話を1つ。先に3人は朝ドラの主役をはったと書いたが、広瀬すずと清原果耶については、広瀬すずが主演の「なつぞら」の時に、清原果耶が妹役として出演している。この朝ドラでの二人の関係性と今回の映画での二人の関係性ががらっと変わっていて、なかなか面白く興味深い。朝ドラのことを全く引きずらずに観ることができるのである。それだけの実力者達であるとも言える。

    文責 木村綾子  

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