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~サッカーを中心に日々の雑感など~

悲しい!!

2012年01月27日 | 映画

 水曜日25日の夕刊に「テオ・アンゲロプロス監督の事故死 ギリシャで撮影中 バイクではねられる」という小さな記事が載っていた。監督の写真がなかったら見逃すところだった。悲しい!!

以下記事によれば…「旅芸人の記録」で知られるギリシャの映画監督、テオ・アンゲロプロスさん(76歳)が24日、交通事故に遭い、アテネ近郊の病院で死亡した。AP通信などによると、アンゲロプロスさんはこの日、最新作「もう一つの海」を撮影していた。トンネル内で道路を渡ろうとしたとき、バイクのはねられて強く頭を打ったという。

1936年アテネ生まれ。留学先のパリから帰国後、60年代から映画製作を始めた。神話を下敷きにギリシャの現代史を批判的に追った「旅芸人の記録」(75年)でカンヌ映画祭の国際批評家賞、「アレクサンダー大王」(80年)でベネチア映画祭の最高賞の金獅子賞、「永遠と1日」(98年)でカンヌ映画祭パルムドールなど、様々な賞を得た。

極端な長回しや曇天での撮影など、独自のスタイルを貫いた。「エレニの旅」(2004年)では実際に二つの村を建設。CGを使わずに洪水で水没した村を描き出すなど、徹底した絵作りで従来の常識を超えた作品を生み出した。…

「エレニの旅」を含む20世紀を描いた3部作を作ると意気込んでいたのだから、これはアンゲロプロス監督にとっても未完のままで心残りだろう。この作品は年内に完成させて、来年のカンヌ映画祭出品を考えていたようだ。この頃あまり映画を見ないので知らなかったら、第2弾「第三の翼」という映画が年内公開を控えているという話。それならぜひ見たいなあ。

「エレ二の旅」は札幌の映画館まで見に行った。札幌へ行くたびに紀伊國屋書店へ立ち寄ってはテオ・アンゲロプロス全集(4巻)を買い揃えて行ったころがなつかしい。ギリシャの歴史を描いた「旅芸人の記録」もいいけど、一番好きなのは「永遠と一日」。左翼的な立場で描いてきたものが、最近では違ってきているようだった。

映画の細かい中身を大分忘れてしまったので、参考にウィキペディアを検索してみたら詳細が書かれてあって、思い出した。ギリシャのテッサロニキという街を舞台に、妻に先立たれ、創作が行き詰ってはもがき、病を抱えて死期が近いという、年老いた孤独な詩人が主人公。アルバニアから逃げてきた少年との出会い。彼を人身売買の養子縁組から有り金をはたいて救いだし、国境を越えて逃がそうとするが…という物語。

ギリシャの国民的詩人というソロモスを登場させ、イタリアに生まれ、ギリシャ語を学び、ギリシャ独立賛歌を詩作したころの映像がところどころで挿入されている。過去と現在、未来が交錯して描かれる、こういう描き方はこの監督さんの特徴でもある。その上に難民という現代的な問題も加えている。

タイトルはどういう意味なのかなあと…、どうやら永遠というのは詩人としての命。一日は生命としての時間ということのようだ。この監督の作品の中ではこの映画は陽光を取り入れ、映像も綺麗で明るくとっつきやすい。少年のこれからにもまだ希望を持たせている。音楽もいいしね。導入部がなんとも素晴らしい。アンゲロプロス監督の中ではもっとも親しみやすい映画というところだろうか。

全集の箱を引っ張り出してきて、「永遠と一日」、その次には「旅芸人の記録」を見てみよう。三部作目の完成を見ずに亡くなられたのは残念だけど、「エレニの旅」の続編があったことに慰められる。「第三の翼」の公開を待ちながら…。