FOOTBALL LIFE

~サッカーを中心に日々の雑感など~

『セントラル・ステーション』 

2006年05月10日 | Weblog
1998年/ブラジル/111分。都会の片隅で一人生きてきた中年女性と母親の突然の死によって頼るものがいなくなった少年が、少年の父親を探しに旅に出るというお話。びっくりしたような目が誰かに似ていると考えたら、日本女優の名わき役、故沢村貞子さんに似ているかなあと思い出した。芸達者な女優と賢そうで、味のある!子役の少年のコンビがとてもいい。

大都会の街角で、誰かに当てた手紙を文字を書けない人に代って書き、郵送もするという代筆屋をして生活している中年女性のドーラ(フェルナンダ・モンテネグロ)は、母親と少年が父親にあてた手紙を代筆した。その直後、母親は事故に遭い亡くなった。一人になった少年ジョズエ(ヴィニシウス・デ・オリヴェイラ)を自宅に連れ帰ったドーラは、翌日養子をほしい人間に子供を斡旋する組織に売り渡してしまう。しかし、そこは臓器斡旋などもするような組織とわかり、少年を助け出し、二人は手紙の住所を頼りにバスに乗って少年の父親を探す旅に出ることになる・・・


生き難さにささくれだったようなドーラの神経も次第に少年の存在に慰められ、いつしかお互いに助け合う関係になっていく。乗せてもらったトラックの運ちゃんにちょっと待ってねと、口紅までつけて戻ったら、いなくなっていたとか、女友達に頼んで振込みされているはずのお金が入ってなくて、さあ、お金がないというときに少年が機転を利かすとか。いろんなエピソードが入ってくる。

夜の闇の中、たくさんの信者がローソクの明かりのもと、救いを求めて祈る姿のシーンが印象的。学校に行ってないジョズエのような少年の存在、文字を書けない人がこんなにもいるから代筆という稼業が成り立つというブラジルの貧しさ。救いようもない世界に取り囲まれて進むストーリーも、最後には浄化されたようなドーラには思わずホッとし、ジョズエにはなんとかうまくいってほしいと願う気持ちになる。

旅の途中で、実はドーラも親に捨てられた存在だったことが明かされる。ジョズエを救おうと考えた彼女にもそう思う理由があったのだ。それほどまでにして父親の元へ返そうというドーラを信用せず、悪い人だといっていたジョズエは旅をしていく中で、母親ではないが彼女に頼るしかないんだ、と二人が行き詰ったとき遂に運命共同体のように彼女も自分をも救うという行動に出る。

若くはない身で都会を生き抜くドーラ役のフェルナンダ・モンテネグロがうまさ抜群。女優でこれだけわるの存在感を出すというのはすごいものだと感嘆してしまう。しかもそれは生きるためで、どこか孤独感を漂わせながら。それと対照的な少年役がいてその毒も薄められる。最後は後味がとてもよかった。ブラジルにこんないい映画があったのかと驚きながら・・・。