もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

8 005 司馬遼太郎「播磨灘物語(中)全三巻」(講談社:1975)感想5

2018年09月16日 22時25分16秒 | 一日一冊読書開始
9月16日(日):       

二段組286ページ     所要時間6:05      図書館リサイクル本

著者52歳(1923~1996:72歳)

本を一冊読めば、一冊分だけ心が軽くなる。心がしなやかになる。

性懲りもなく大河ドラマ「軍師官兵衛」(2014)を繰り返し見続けている。今は、三木城攻めを終え、御着小寺氏が滅び、播磨征圧が完了し、宇喜田直家が八郎(のち宇喜田秀家)を秀吉に託し、いよいよ本格的な毛利攻めにかかるところである。この大河ドラマのキャスティングは非常に適切であり、人物像もしっかりしている。歴代大河ドラマの中でも、相当上位に位置づけられる傑作である。

久しぶりに一日で一冊を読み切れた。読んでいて、登場人物が映像として非常にイメージしやすいのが理由だ。ドラマと小説を重ね合わせて見ていくうちに、この「播磨灘物語」と大河ドラマ「軍師官兵衛」の筋書きは、かなり違うが、肝心な人物像や時代背景などのベースに司馬さんの「播磨灘物語」が存在することは疑う余地がない。

ドラマの題を「播磨灘物語」としないことによって、司馬作品をベースとしながら、ストーリー展開や登場人物の選択にフリーハンドを得ている気がする。そしてその試みは十分に見ごたえのある作品として成功している。ドラマでもそうだが、そのベースにある本作「播磨灘物語」では登場人物ひとりひとりの性格付けが非常にしっかりしていて、人間観察力がすごい。すご過ぎる。

信長、秀吉をはじめ、当時の武将たちの姿が手に取るように表現されている。織田軍団の性格、信長の思考の特異性など。特に黒田官兵衛については、勝手に利発・冷静な軍師という印象をもっていたのが、血も涙もあり過ぎる、私欲の極めて少ない当時としては極めて稀な武人であったことが分かり、印象ががらりと変わった。竹中半兵衛が官兵衛に相似形で深い親しみを抱いていたこと、結核で余命わずかなことを見越して、官兵衛の息子松壽丸(のち黒田長政)の命を信長の怒りから救ったこと、など秀吉幕下の両兵衛の関係も面白かった。

司馬さんの手に掛かれば、その時代のその場所やその人物がまさに今そこにあるかのように実感を持って語られるのが本当にすごい。難点を言えば、虚実皮膜、その境界が分からないことであろう。

(中)巻では、いったん織田方に靡いたはずの播磨の国人たちが、加古川評定で三木城の別所長治の叔父賀相(よしすけ)が毛利に付くと表明したことで、大分裂状態に陥り、長い長い三木城攻めの始まり、織田の六将の一人摂津の荒木村重が離反、摂津伊丹の有岡城攻城戦、説得に行った官兵衛は主君である御着の小寺藤兵衛に裏切られ一年以上の土牢幽閉、村重逃亡と有岡城落城、大量殺戮、官兵衛救出、三木城落城、別所長治一族自決まで。

(下)巻では、宇喜田の調略、備中高松城水攻め、中国大返し、秀吉の天下や朝鮮侵略はどの程度描かれるのか、そして何と言っても関ヶ原と並行して天下を狙って行われる九州平定活動など興味が尽きない。

【目次】加古川評定/三木城/風の行方/秋浅く/村重/御着城/摂津伊丹/藤の花房/夏から秋へ/村重の落去/別所衆
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