もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

0012 谷崎光「北京大学てなもんや留学記」(文春文庫;2007、2008)感想5

2012年11月06日 01時49分27秒 | 一日一冊読書開始
11月5日(月):

364ページ  所要時間3:50           ブックオフ105円

著者43歳(1964生まれ)、女性、2001年から北京在住。30秒見開き2ページを目指したが、面白くて良い意味で挫折した。ブック・オフで105円で手に入れた本であるが、思い掛けない当たりである!

 尖閣問題に伴う、中国の反日デモの実態が、まるで現地の路地から中国人たちの生態を眺めているような臨場感で理解できた気がする。日本から長年ODAの恩恵を受けていながら、それを隠し続けた中国共産党による反日教育・反日宣伝の愚劣さを改めて深く気付かされた。

 内容は、37歳から対外経済貿易大学で1年、北京大学で2年間学生生活を送るなか、体当たりで中国人の実態に肉迫するルポルタージュである。「中国を一週間旅すれば本が書ける、中国に一ヶ月居れば論文が書ける、中国に一年住むと何も書けなくなる……」と言いながら著者は、「見たこと考えたことをストレートに、あの時の私に見えたままに、誰にも遠慮なく書きました」と言い、平気で中国共産党が嫌いだと言い放ち、中国人のイヤらしいところを歯に衣着せずに暴露している。

 加藤嘉一「中国人は本当にそんなに日本人が嫌いなのか」(ディスカバー携書;2010-11)を読んだ時、「この本を読んでも、生々しい中国社会の矛盾や息遣いは感じられなかった。若さゆえの問題意識の希薄さ。中国共産党政権下での優等生的な日中相殺の論評。公式発言的喰い足りなさ。いろいろ理由は考えられるが、北京大学卒業生として中国共産党政府と共存し、外務省官僚に憧れる著者の目線の高さも理由の一つだろう。関心が高い階層に集中して、貧富の格差に苦しむ庶民の思いに向いていない気がするのだ。著者は、ジャーナリストではないのだ。」と強い不満を記したが、中国政府の顔色を見ている加藤嘉一氏の眼差しに対する違和感に比べて、谷崎光氏による本書は明け透けなぐらいに中国人民と中国社会のウンザリする生態を活写し、著者が北京に在住できているのが不思議なくらいに中国共産党政権の愚劣さを指弾している。

 はっきり言えるのは、著者のルポは、現在の日中関係の混乱状態を理解する上で大変参考になる。経済発展の途上で、共産党による間違った反日利用教育によって、エスノセントリズムの夜郎自大に陥った中国の若者たちが、早くも中国の世界での位置付けを見失っている様子がよくわかる。庶民派谷崎光は、エリート意識の強い加藤嘉一よりもリアルな中国を描写していて圧倒的に面白い! 欲しかったのは、本書のようなリアルさである。また、著者は中国に対する悪口が圧倒的に多いが、中国に対する愛着も感じているようである。「日本は快適だが、視線がねばっこい。」という言葉は、俺も同感だ。

 反日教育を受けた中国人は、心の底から日本人が嫌いである。それが少しのきっかけで、必ず噴出する。そして実は、日本のことも、世界のこともを全くわかっちゃいない。

 反日デモに関わって:「中国はスケールの大きな超優秀な人も多くいるが、日本人が想像もできない種類の「阿Q」もそれ以上にたくさんいる国なのである」

 本書の面白さは、やはり読んでもらうのが一番だろう。損はさせないので、是非ご一読を! そうすれば、現在の日中関係の紛争が、意外と数十年の長期戦になるかもしれないこと。ひょっとすれば中国共産党政権の瓦解の日まで続くかもしれないことがよくわかると思いますよ。そして、こんなに繊細でややこしい日中関係の背景をしっかりと理解しないままに、悪意で尖閣問題を引き起こしたジリノフスキー石原老害ゲス野郎と、僕ちゃん外交音痴でちゅのウソつき野田汚物民主党詐欺師政権の罪深さもよくわかるだろう。
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