もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

3 003 篠原令「妻をめとらば韓国人!?」(文春文庫;1999) 感想5+

2013年09月04日 01時59分31秒 | 一日一冊読書開始
9月3日(火): 良書である。隣国ときちんと付き合う方法は、<過去の歴史に対する反省>は勿論大事だが、相手に対する<健全な批判精神><相手の身になって考える想像力>の両方を磨くことである、と教えてくれる。

230ページ  所要時間 3:00    ブックオフ105円

著者49歳(1950生まれ)。

帰宅後、すぐに本読みに入れず、机に座ったままで1時間ほど意識を失っていた。首が異様に痛くなって目覚めた。9時を過ぎていて「今日の読書は無理かな…」と思いつつ、日曜日にブックオフで買った本書を手にした。ダメ元でいい、と思いつつ1ページ30秒では読み切れないのだが、読み始めた。

読み始めると、昔、韓国語を勉強していた頃の記憶が心地よく思い出された。ソウルにも4週間、3週間と二度自費で語学研修に行った。韓国旅行も何度も行った。その上で言うが、この著者の言葉・感性は良い! 本物だ! 期待してなかったのだが、思わぬ掘り出し物に出会えた気がした。

他人には、「韓国が好きだ」と言いながら、近年の日韓関係の行き詰まりには正直興ざめして戸惑っている。野田汚物前民主党内閣や詭弁モンスター橋下、歴史修正主義者安倍晋三など日本の政治家の稚拙さ・愚劣さに原因の一端があることを当然のこととして認める。

それを前提にしてだが、戦後68年も経って、韓国が日本に対して、批判不可能な「被害者」という優位な立場にしがみ付き続けて、執拗に粘着的に責任追及する姿に対して、

「これは日本だけに問題があるのではない…」「日本人が愚劣だからといって、韓国人が愚劣でない証明にはならんわなあ…。韓国も硬直して思考停止状態に陥ってる部分も必ずあるだろう…」「被害者だから立派なんて言えないわなあ? 李明博前大統領の浅ましい自己保身的竹島訪問、快哉を叫ぶ韓国国民、それに踊らされて国際司法裁判所提訴などできもしない拙劣な反応をした野田汚物内閣」「韓国の政治家だって下らない野郎はいっぱいいるだろう!」「被害者・韓国の言うことが、何でも正しいとは限らない。でも、一方で、その様なことを言い続ける韓国の心性(心の有り様)を汲み取る努力は絶対に必要だし、その努力をきちんとできているのかの自己検証は大事だ。」

と、当り前のことに気づき戸惑い始めていた今、本書を読んだのはタイムリーというしかない。こういう邂逅があるのが、読書の醍醐味かもしれない。

本書は、台湾や中国で翻訳・出版されたそうだが、韓国では翻訳・出版は立ち消えになったそうだ。何とも韓国政府・社会の懐の狭いことよ! 韓国では“禁書”扱い、その程度には、韓国に対して批判のスパイスが効いているということかもしれないが、俺の読むところでは著者は韓国を多少批判もしているが、それよりもはるかに韓国に対する愛着を表明している。

そもそも、著者は日韓関係がそれほど深くなってない1970年代前半の朴正熙政権時代に留学し、韓国人の夫人とめぐり会い、結婚して、二人のハーフ(ママ)の娘に恵まれているのだ。そして、二人の娘たちが日韓いずれの文化の影響を強く受けるのか、と楽しみに眺めてられる。さらに「老後は妻の祖国の韓国で送るつもりだ」と述べているのだ。

また、著者は日韓の物の考え方の隔たり、相違の根本に韓国の<儒教(朱子学)と科挙の伝統>の影響を強調しているが、卓説だと思う。

ノーベル平和賞をとった金大中政権すら批判の俎上に乗せる本書に書かれていることは、素直に評価できる。一方で本書で示される韓国人の心性に対して、懐かしい気分に浸らせてもらえた気がしている。

この本が、今ひとつ日韓両国で話題にならなかったのは、大変惜しいことだと思う。現在の完全に行き詰まった日韓関係を理解・打開していく上で、非常に有用な意見がたくさん記された著作として俺は強く本書を推奨する。

*表面だけ取り繕っているより、取っ組み合いの喧嘩をして、双方の違いをはっきり認識しておいたほうが、両国関係はよくなっていたでしょう「自尊心」という言葉に表れた韓国側の深く、強く、切ない思いに対して、日本側はいつも「事実関係」という、冷たい、空虚な、機械的な言葉で対応してきました。これでは溝は埋まりません。政治も外交も現実です。しかし人間が関与する以上、感情は無視することができません。どのようにして感情の融和をはかるか、これが大政治家の条件ですが、不幸にして日韓の間にはそのような政治家が存在しませんでした。/略。/私は家内と結婚し、自尊心だ何だと、訳のわからない言葉に何度も腹を立てたり、あきれたりしながらやってきましたが、十年過ぎた頃から、やっと少し韓国人の心の中が見えてきました。そうした体験から常々感じているのですが、ニコニコ笑いながら握手しただけで、軽々しく日韓の新時代を口にする日本の政治家たちは一体何なのだろうと不思議に思います。そんなに簡単に理解しあえるはずがないからです。176~177ページ。
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