もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

200505 湯浅誠 在宅リスク 見落とさないで

2020年05月05日 13時59分21秒 | 考える資料
5月5日(火):  
朝日デジタル外出自粛に「在宅リスク」 湯浅誠さん(51)が心配する副作用
コロナ社会を生きる  聞き手・室矢英樹
2020年5月5日 12時00分

困難な子 支援の手立てを
 「ステイホーム」に象徴されるように、外出自粛や休業要請といった感染を抑える力が強く働くほど、経済は萎縮し、失業や休業によって生活困難が起きます。2008年のリーマン・ショックで開いた「年越し派遣村」は1カ所の公園に集まることで、派遣切りされた労働者がいるという事実が見えました。今は人と人とがつながるのが難しく、困難な状況が見えにくくなっています。
 今回の問題は三つのフェーズ(段階)で考える必要があります。緊急事態宣言が今月末まで延長された今の段階と、次に来る移行期。解除されてもすぐに以前のような状態には戻らず、地域や業種で段階的に解除されていくことになるでしょう。そして収束後の「アフターコロナ」です。
 阪神大震災は大変な経験でしたが、数年後には「ボランティア元年」と呼ばれるようになりました。そうした芽が生まれるよう、社会に種をまいていきたいと思っています。

「行き過ぎた萎縮の副作用が心配」
 感染拡大の抑止策は経済や生活を直撃するため、応急手当てが必要になります。今、見逃してはならないのが「在宅リスク」です。家にいることがマイナスになる人たちがいます。DVを受けかねない妻、虐待されかねない子ども……。親の失業や収入減が加わると高いリスクになり得ます。10万円の給付では生活が立ちゆかなくなる人たちにも目を向ける必要があります。
 そのためには相談支援が重要です。相談支援にはこちらから出向く「アウトリーチ」と、来てもらう場を作るという二つの手法があります。今はどちらも困難ですが、それゆえ、わずかな接点でも積極的に活用していく柔軟な発想が求められます。
 私は今、生活に困っている人たちに食料を配る「フードパントリー」や「子ども食堂」を支援しています。弁当や食料を配るだけではない、いわば相談支援付きの無料スーパーです。食材の受け渡し時に言葉を交わしたり、情報提供したりすることで、相談支援の場となりえます。
 相談支援というと難しく聞こえるかもしれませんが、愚痴、不安を口にできるだけでもいいんです。何げないことですが、とても大事なことです。自分の抱えていることは、なかなか自分では整理できない。コミュニケーションを取ることで、自分の考えが整理されたり、助言を受けたりできます。在宅リスクを緩和してくれる場所なのです。
 私が運営に携わるNPOで4月、全国の子ども食堂にアンケートをしました。回答した35都道府県の231団体のうち食堂を開けていたのは1割。ただ、半数近くが弁当や食材を取りに来てもらったり、配ったりしていました。
 子ども食堂の人たちは全国で生活が大変な人たちとの接点を持ち続けています。アンケートには「みんなのことを応援しているよ、という心も届けたい」「不安な感情に安らぎを持たせ、孤立感を防ぐサポートになる」という皆さんの思いも書かれていました。
 自粛は必要ですが、行きすぎた萎縮になってしまうと副作用が心配です。外出も人と距離を取れば問題がないはずですが、外に出てはいけないと受け取っている人も多い。フードパントリーにも「こんな時期にけしからん」という批判があります。でも、必要としている人にとってはスーパーと同じライフラインです。恐れることは必要ですが、過敏に反応していかなる接点もつぶしてしまうと、見えないところで悲惨なことが起こりかねません。個々人のニーズを丁寧に見極め、感染リスクとともに生活リスクにも配慮する必要があります。

「官民連携しないと、こぼれ落ちる人たちがいる」
 緊急事態宣言が解除された後の移行期は「3密」に気をつけながら、地域の居場所を速やかに開く。私たちは感染症にくわしい医師と連携し、子ども食堂の開設へ向けたハンドブックの準備をしています。学校再開とタイムラグ(時間差)が生じないようにしたい。
 その際、自治体に求めたいことがあります。民間とはいえ、子ども食堂などは公共的な役割を担っています。大人数の会食と、社会的に必要だから継続している保育園での食事。その中間的な位置づけが必要だと思います。この小学校区に「こういう場所があります」と周知することは、自治体にとっても重要な住民サービスです。
 今の状況はある種の災害です。子ども食堂のような居場所は民間避難所で、地域と子どもたちがつながる大事な接点になります。官民が連携しないと、こぼれ落ちる人たちがいるとの意識を持ってほしい。
 今年のこどもの日は異例ずくめです。それでも、困難な子どもたちとつながっている人たちがいる。そうした人たちを支えていきたいと考えています。(聞き手・室矢英樹)
     ◇
 ゆあさ・まこと 社会活動家、東大特任教授。NPO「全国こども食堂支援センター・むすびえ」理事長。著書に「『なんとかする』子どもの貧困」(角川新書)など。長年、生活困窮者を支援し、リーマン・ショック時の「年越し派遣村」で村長を務めた。

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