もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

7 044 スウィフト「ガリヴァー旅行記 平井正穂訳」(岩波文庫:1727:1980訳)感想4+

2018年04月08日 19時32分26秒 | 一日一冊読書開始
4月8日(日):   

461ページ     所要時間2:25      ブックオフ105円

著者59歳(1667-1745)。イギリス

みっしりと文字の詰まった450ページを超える文庫本。きちんと読まねばと考えれば、恐らくもはや死ぬまで読めない。分かろうが分かるまいが、縁だけ結んでおこう、と思い、文字通り「1ページ15秒」を徹底して、ページに目を上下動させて、ともかく最後まで眺め通した。従って、詳細は読み飛ばしている。

しかし、今回、読書としては、うまくいった方だと思う。調子の悪い時には、まずページの上を眺める行為そのものの継続が困難であるが、今回はなんとか最後まで通せた。そして、その分ストーリーの流れやポイントも比較的頭に入りやすかったと思う。「スウィフトは、荒唐無稽な国国における数奇な体験や見聞を、ガリヴァー(愚者の意)という人物をして語らしめることによって、イングランドの社会・政治に対し、さらに人間存在そのものに対して、諷刺的な批判を加えようと考えたようである。(訳者・平井正穂、456ページ)」という解説もよくのみ込めた。

×1/12の小人の国リリパット、×12の巨人の国ブロブディンナグ、巨大な空飛ぶ島が遊弋する国ラピュータ、ラグナグ島(中国か)の不死人間の呪われた宿命、日本での踏絵逃れ、アンボイナ号の名称などを経て、第四篇フウイヌム国渡航記がスウィフトの社会・政治批判のクライマックスとなる。フウイヌムとはこの国の支配者である<馬たち>である。この国では、<人間>は四つ足で、ヤフーという非常に卑しく精神の汚らしい汚物まみれの忌むべき存在である。一方、馬たちは高い徳を備えた理想的な社会の支配者としてガリヴァーをもてなす。やがてガリヴァーは、この国のヤフーの本質が、現実の自分たちイギリス人とも通底していることに気づき、イギリスに帰国後、人間の国イギリスで社会不適応を示すことになる。

端倪すべからざる人間(略)の端倪すべからざる作品」として『ガリヴァー旅行記』を呼んだ訳者が、スウィフトの人生について、「彼がこれを発表した以後、いろんな論文や詩を書いてやがて狂人となって死んでいったという、まぎれもない事実(459ページ)」と指摘している。児童文学にもなっている本書だが、かなりやばい大人の世界観・人生観を展開した本のようだ。これがわかっただけでも、今回の縁結び読書は上出来だった。

ちなみに感想4+はひとえに読書時間の短さの故である。もう少し時間をかけて読めば、おそらく特5になるだろう。特に、日本に関する記述も結構あって、面白い。しかしながら、他の国がすべて架空の国々なのに、その中に実在の国として日本だけが入っているのは、少し複雑な気分である。日本って、架空の存在に近い国だったのか。それとも、オランダを通じて、少なくともイギリス人の注目を集めていたのか、さてどうだろう。

【目次】はしがき
第一篇 リリパット国渡航記 :
第1章 著者、自分について、またその家族について語る。初めて旅行に出た経緯。難破して、必死に泳ぎ、無事リリパット国の海岸に辿りつく。囚われて、内陸部へ護送される。 /第2章 リリパット国皇帝、数人の貴族をつれて、軟禁中の著者を訪問される。皇帝の容貌と衣装の説明。著者にこの国の言葉を教えるために、学者が任命される。著者、その穏やかな人柄のせいで好評を博す。ポケットを捜索され、剣と拳銃が押収される。 /第3章 著者、皇帝及び男女の貴族たちを甚だ珍妙な方法で楽しませる。リリパット国の宮廷における娯楽について。著者一定の条件つきで自由を与えられる。 /第4章 リリパットの首都ミルデンド及び皇帝の宮殿についての説明。著者にこの国の宮殿についての説明。この帝国直面している諸般の事情に関する、著者と首相との会談。著者と首相との会談。著者、この国に戦争が生じた場合には皇帝に忠誠を尽す旨を申し出る。 /第5章 著者、端倪すべからざる策略を用いて敵の侵入を防ぐ。著者最高の栄誉称号を授与される。ブレフスキュの皇帝から派遣された大使らが到着し、和平を乞う。后妃の居室、事故により炎上。著者、消火に協力し、宮殿の延焼をくいとめる。 /第6章 リリパットの住民、及び彼らの学問、法律、習慣について。彼らの子弟教育法。この国における著者の生活。ある貴婦人についての弁護。 /第7章 著者、自分を叛逆罪で糾弾しようという陰謀がめぐらされていることを知り、ブレフスキュに脱出する。そして、その地で歓待を受ける。 /第8章 著者、運よくブレフスキュを離れる手段を見つける。幾多の困難を経て、故国に無事に帰る。 
第二篇 ブロブディンナグ国渡航記 :
第1章 大暴風雨の描写。水を補給するために長艇が陸地に向けて出され、著者これに同乗、ブロブディング国を発見する。著者、海岸にとり残され、土地の連中に捕えられ、農民の家に連れてゆかれる。歓待されるが、いろんな事件に会う。住民の描写。 /第2章 農夫の娘の描写。著者、市の立つ町へ、次いで首都へ、連れてゆかれる。この旅行の具体的説明。 /第3章 著者、宮廷に招かれる。王妃、著者をその主人である農夫から買いとり、王に献上される。著者、国王陛下附きの学者たちと論争する。宮廷内に著者のために設けられた居室。 王妃に可愛がられる。著者、己の祖国の名誉を弁護する。王妃附きの侏儒とのいさかい。 /第4章 この国についての説明。現代の地図を訂正することを提唱する。国王の宮殿、及び首都についての若干の記述。著者の旅行の様子。この国最大の寺院についての説明。 /第5章 著者が遭遇した数々の冒険。或る罪人の処刑。著者、その巧みな航海術を披露する。 /第6章 著者、国王と王妃を喜ばせようとして各種の工夫をこらす著者、音楽の才能を披露する。ヨーロッパの情勢について国王より御下問あり、著者これに答える。 /第7章 著者の愛国心。国王に有益な提案をするが斥けられる。政治に関する国王の驚くべき無知。この国の不完全かつ一面的な学問。この国における法律、軍事、政党。 /第8章 国王と王妃、ともに辺境地帯に旅行される。著者、お二人に随行する。この国を去るに際して、著者が経験した事態の詳細な説明。著者、イギリスに帰る。
第三篇 ラピュータ、バルニバービ、ラグナグ、グラブダブドリッブおよび日本への渡航記 :
第1章 著者、第三回目の航海に出発する。そして海賊に捕えられる。或るオランダ人の悪意。或る島に到る。ラピュータ島に迎えられる。 /第2章 ラピュータ人の気質や考え方について。彼らの学問について。国王とその宮廷について。著者が受けた歓待について。住民が恐怖と不安にかられていること。女たちのこと。 /第3章 近代の学問と天文学によって解決された或る現象。天文学に対するラピュータ人の偉大な貢献。叛乱鎮圧についての王の秘策。 /第4章 著者、ラピュータを去り、バルニバービに連れて行かれ、首都に到る。首都及びその周辺の描写。著者、或る貴族に暖かく迎えられる。この貴族との対話。 /第5章 著者、ラガードの大研究所の見学を許可される。研究所の詳しい説明。教授たちが従事している様々な学問。 /第6章 研究所の説明のつづき。いくつかの改善策を示し、丁重に受け入れられる。 /第7章 著者、ラガードを後にしてマルドナーダに到着する。便船見つからず。グラブタブドリップへの短期間の航海を試みる。族長に歓待される。 /第8章 国王と王妃、ともに辺境地帯に旅行される。著者、お二人に随行する。この国を去るに際して、著者が経験した事態の詳細な説明。著者、イギリスに帰る。 /第9章 著者、マルドナーダに帰る。ラグナグ王国への航海。著者、拘禁される。宮廷に呼ばれる。伺候の状況。臣民に対する王の寛大な態度。 /第10章 賞賛に値するラグナグ人。ストラルドブラグの詳細な説明。ならびに、この問いついて 著者が数人の著名な人々と交わした談話。 /第11章 著者、ラグナグを後にして日本に航海する。その地からオランダ船に乗ってアムステルダムを後にしてイギリスに帰る。
第四篇 フウイヌム国 :
第1章 著者、或る船の船長となって出帆する。部下たちが叛乱を起こし、著者を船室に長い間監禁したのち、とある未知の国の海岸に置き去りにする。著者、奥地に向かって旅をする。ヤフーという奇妙な動物の描写。著者、二頭のフウイヌムに出会う。 /第2章 著者、フウイヌムに案内されてその家に到る。その家の描写。著者、歓待される。フウイヌムたちの食物。肉類に飢えていた著者、遂に救われる。この国における著者の食事の情況 /第3章 主人であるフウイヌムの助力をえて、著者、語学の勉強をする。この国の言語に関する説明。身分の高いフウイヌムたち、好奇心にかられて著者を見物にくる。著者、自分の航海について主人にその概略を語る。 /第4章 著者、真実と虚偽に関するフウイヌムの考え方。著者の意見、主人によって反駁される。著者、自分のことや航海中の出来事についてさらに委しく説明する /第5章 著者、著者、主人の命令によってイギリスの状況を説明する。ヨーロッパの君主間に生ずる戦争の諸原因。著者、イギリス憲法について解説を始める。 /第6章 アン女王治下のイギリスの状況(続き)。ヨーロッパ各国の宮廷における首相の特質。 /第7章 著者、祖国に対する著者の大きな愛情。著者、他国の類似の例などをあげ、比較対照しつつ、イギリスの憲法と行政について説明する。その説明に対する主人の意見。人間性に対する主人の意見。 /第8章 著者、ヤフーの様々な性質について述べる。フウイヌムの偉大な美徳。その子弟の教育と訓練。その大会議。 /第9章 フウイヌムの総会における大討論とその決議の仕方。フウイヌムの学問。その建物。埋葬の方法。彼らの言語の持つ欠陥。 /第10章 フウイヌムたちの間にあって、著者がいかに暮らし、いかに幸福な生活を送ったかということ。彼らと交わることによって、著者の徳性、格段の進歩を示す。彼らとの交わり。著者、主人より、この国から退去するよう警告を受ける。著者、悲しみのあまり失神するが、結局退去を承諾する。仲間である召使の助けをかりて、丸木舟を苦心の末完成する。 /第11章 著者の危険な航海。ニュー・ホランドに到着し、定住を願う。土着民の矢を受けて負傷。捕えられ、、無理矢理にポルトガル船に連行される。船長の手厚い接待を受ける。著者、イギリスに到着。 /第12章 著者の誠実。本書を刊行する意図。真実を歪める旅行家を糾弾する。本書執筆に際してなんら不祥なたくらみなど一切なき旨を弁明する。或る非難に対する答え。植民地を開拓する方法。祖国礼賛。著者がここに記述した諸国に対するイギリスの支配権は正当視さるべきこと。これらの国々を征服することの困難。著者、読者に別れを告げ、自らの将来における生活設計を語る。著者の忠告と結論。

ガリヴァー船長より従兄シンプソンへ宛てた書簡

出版者より読者へ

訳注 / 解説

【内容紹介】子供のころ誰しも一度はあの大人国・小人国の物語に胸を躍らせたにちがいない.だが,おとなの目で原作を読むとき,そこにはおのずと別の世界が現出する.他をえぐり自らをえぐるスウィフト(一六六七―一七四五)の筆鋒は,ほとんど諷刺の枠をつき破り,ついには人間そのものに対する戦慄すべき呪詛へと行きつかずには止まない.
■原題:"Travels into Several Remote Nations of the World, in Four Parts. By Lemuel Gulliver, First a Surgeon, and then a Captain of several Ships"

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