もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

4 020 シンシアリー「韓国人による沈韓論」(扶桑社新書:2014.9月) 感想 3+

2014年11月11日 01時15分05秒 | 一日一冊読書開始
11月10日(月):

267ページ  所要時間 2:10     図書館

著者40代?(1970代生まれ)。韓国生まれの韓国育ち、生粋の韓国人。韓国で歯科医院を営む。子供の時から日本語に親しみ日本語を自由に操り、本国韓国ではなく、日本に向けて日本語ブログを解説している匿名のブロガーである。

以前に読んだ中国人たちが中国の悪口を言い続ける下品な本に比べると、ずっとまともな内容の本だ。書かれている内容は、評価の仕方はいろいろできたはずだが、基本的な事実関係に違和感はない。悪口本一般にみられる独善や阿りはあまりなく、むしろナイーブな印象を持たされる。

不快さはないが、何かしらどっと疲労感を覚えさせられる内容だった。「やれやれ日本はえらい扱いの難しい人々を植民地支配してしまったんだなあ」と心からため息が出た。俺だって韓国の人々を100%の被害者で、全く非の無い聖人君子だなどとは思っていない。むしろ人間の性質(たち)としては、現在の日本人の方が、全体としてはずっと韓国人よりも上品で寛容だと思っている。

一方で日本が近代史の中で朝鮮半島の人々を踏み台にして、ついには韓国併合をして植民地にしてしまった。土地調査事業で朝鮮の人々の土地と生活基盤を奪い、同化政策で言葉を奪い、誇りを奪い、民族を抹殺して皇民化教育を行ってしまった事実を踏まえれば、過去を誤魔化さず、謝罪すべきは謝罪して、負の歴史であっても記憶すべき歴史として認めるべきだと思っているのだ。

しかし、著者が本書で述べる韓国人の弱さ、卑劣さ、ずるさはリアルであり、本当のことだと思う。もちろん、その弱さ、卑劣さ、ずるさは、日本人にも同等に散在しているものである。それにしても、これほど大きな声で明け透けに聞かされると、何かしら韓国に対して持っている俺自身のこれまでの共感や過去の歴史への反省の信念が、韓国に正当な受け手を持っていないのではないかと不安にさせられる。「それはおまえ自身の歴史認識が甘っちょろいからだ」と言われれば、「もう少し努力します」としか言いようは無いのだが、個人の日本人の立場では、本書を読むことによってぐらりとくる部分があることは否めないのだ。

世間一般よりは、人権や歴史の理解をしているつもりの俺でも、気分が不安定になるのである。ほとんど知識や理解の無い一般の日本人や若者が本書を読んだ時の影響のひどさは十二分に想像できる。その意味で本書は、かなり危険な影響を与える本である。

それが著者の意図だというのは分かっている。また、河野談話を虚仮にしたり、現在の性被害者と並べて相対化して、従軍慰安婦の女性たちを「ただの売春婦だ」と言いたげな論調には断じて与することはできない。さらに、極右安倍晋三の「戦後レジームからの脱却」を全面的に支持する姿勢などおよそ信用できない。著者が、日本社会の民主的発展に寄与する意志が無いまでも、そこまでの配慮も責任の意志も無いことは明らかだ。

この書によって、即ち、韓国と韓国人を貶めることによって、日本人に自信を持てと言うならば、そんなつまらないマスターベーションのような自信や優越感は唾棄すべきであって不要だ。この書の内容を肯定した先に、「建設的な未来が無い」という点では、やはり一般の嫌韓・嫌中の虚しい本の中の一つとしか言えない。


・「韓国では多様な文化を認めるのでなく、常にそれが自分たちよりも上か下かの二択しかできない。」

・悪名高い創氏改名の一側面として、被差別民の「ベクチョン」が職業がそのまま姓氏になっていたのを、「日本は韓国の姓氏による身分制度を廃止し、ちゃんと勉強すれば出世できる制度を韓国にも持ち込み、その際に、ヤンバン(両班、支配階級)の姓にこの人たちを「統合」した」「身分の低い人たちから見ると、「生まれがどうであれ、頑張って勉強すれば出世できる」という日本が持ち込んだ制度は、救世主の福音みたいなものだったでしょう」「80年代まで「チョン・バン・ジ・チュク・マ・ゴル・ピは身分が低い」という都市伝説存在した。」(194~196ページ )などは大変興味深かった。
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