もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

5 018 重松清「とんび」(角川文庫:2008)感想5 *2003秋~2004夏、新聞連載小説

2015年10月08日 03時22分04秒 | 一日一冊読書開始
10月7日(水):      

420ページ    所要時間 7:45     ブックオフ108円

著者45歳(1963生まれ)。

読んでいて何度も落涙して泣いた。

毎日が決まりごとで忙しく、若い時のような元気さも失われ、「とりあえず仕事に穴をあけずにやり続ける」ことだけを考えて日々を送っていると、時折他人にひどい心無い言葉や態度をとってしまうことがある。相手が自分より弱い立場の者であった場合などには、ひどくすさんだ気持ちになる。そんな時、読みたくなる作品だ。肯定も否定もしないが、寂しさ、悲しみをもって生きることに意味があると、「大丈夫だ」と感じさせてくれる作品だ。

本書は二度目だが、何度でも読み返せる物語である。「美しい」ではなく、「(気立ての)よい風景」を見させてくれる小説だ。読んでいてTVドラマ「とんび」ヤスさん役の内野聖陽 の姿がずうっとオーバーラップし通しだった。原作とTVドラマは意外と違う。TVドラマは、原作を大事にした上で巧みに換骨奪胎して別作品だと感じた。久しぶりにDVDを見直そうかな。

一人息子のアキラが3歳の時、母親の美佐子さんが事故で亡くなり、男手一つで息子を育て上げたヤスさんとそれを取り巻く人々の物語である。「道徳」という言葉は嫌いだが、人として生きるべき道を見失ったときに、「人としての筋の通し方」「理ではなく情の筋とは何か」「寂しさを背にやせ我慢すること」「やっぱりそっちの方でいいんだよな」を考えさせてくれる。

紹介文:昭和三十七年、ヤスさんは生涯最高の喜びに包まれていた。愛妻の美佐子さんとのあいだに待望の長男アキラが誕生し、家族三人の幸せを噛みしめる日々。しかしその団らんは、突然の悲劇によって奪われてしまう―。アキラへの愛あまって、時に暴走し時に途方に暮れるヤスさん。父親は、悲しみを飲み込む海になれ…。我が子の幸せだけをひたむきに願い続けた不器用な父親の姿を通して、いつの世も変わることのない不滅の情を描く。魂ふるえる、父と息子の物語。
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