もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

9 042 重松清「小学五年生」(文芸春秋:2007)感想4+

2020年04月29日 01時19分07秒 | 一日一冊読書開始
4月28日(火):  

266ページ        所要時間3:35        ブックオフ200円

著者44歳(1963生まれ)。岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。出版社勤務を経て、フリーライターに。91年『ビフォア・ラン』で作家デビュー。99年『ナイフ』で第14回坪田譲治文学賞、『エイジ』で第12回山本周五郎賞を受賞。2001年『ビタミンF』で第124回直木賞受賞。ルポルタージュ、時評、評論など小説以外のジャンルでの執筆活動も高い評価を受けている

五年生の目から見た自分の姿、大人たちの姿、世の中の景色。人生で初めて経験する際どい思い、純な思い、互いに人生の素人同士、その意味で対等ではた目にはすがすがしいが、本人たちは必死な時代、それが小学五年生である。

思春期の酸っぱさすら自覚し切れないほど純粋な時代、無意識な子どもから、自意識が芽生え、一歩を踏み出そうとする存在、それが小学五年生である。

そんな五年生のさまざまな体験と思いの瞬間瞬間を見事に描いて見せてくれる17編の作品集。物語りが始まる度に「これはどういう人間関係なのだろう。どういう物語りなのだろう。」と考える。設定がわかった後、じんわりとした気分になったかと思うと、さっと切り上げられる。その繰り返し。

重松清はどうして子どもの頃の記憶をこんなに鮮やかな作品にできるのだろう。読んでいて確かに自分の子どもの頃がそこにあったと思う。小学五年生の子どもたちに読ませてあげたい、きっとびっくりするだろう。そして、「もっと今を大切にしよう」と思うだろう。それとも「こんな恥ずかしい時代なんかすっ飛ばして早く大人になりたい」と思うだろうか。

【目次】葉桜/おとうと/友だちの友だち/カンダさん/雨やどり/もこちん/南小、フォーエバー/プラネタリウム/ケンタのたそがれ/バスに乗って/ライギョ/すねぼんさん/川湯にて/おこた/正/どきどき/タオル

【内容情報】クラスメイトの突然の転校、近しい人との死別、見知らぬ大人や、転校先での出会い、異性へ寄せるほのかな恋心、淡い性への目覚め、ケンカと友情ーまだ「おとな」ではないけれど、もう「子ども」でもない。微妙な時期の小学五年生の少年たちの涙と微笑みを、移りゆく美しい四季を背景に描く、十七篇のショートストーリー。/人生で大事なものは、みんな、この季節にあった。十歳もしくは十一歳。男子。意外とおとなで、やっぱり子ども。
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