7月19日(木):
223ページ 所要時間3:35 古本市場86円
著者77歳(1937生まれ)。神奈川県鎌倉市生まれ。1962年東京大学医学部卒業後、解剖学教室に入る。1995年東京大学医学部教授を退官し、2017年11月現在東京大学名誉教授。著書に『からだの見方』『形を読む』『唯脳論』『バカの壁』『養老孟司の大言論I〜III』など多数。
著者の著作には、その冷静過ぎる(?)語り口に対して「あなたがきちんと整理して語るほどには読者の俺は今の社会を冷静に距離をとって眺めてられないんだ。こちとらもっと切実なんだ」という違和感と反発を覚えながら、一方でその学識の高さに承服せざるを得ない現実で揺れながら、「まあ頭を下げきることは出来ないが、認めざるを得ないということで、感想4ってとこかな。」というのを繰り返してきた。
本書でも、半ば過ぎまで感想4の予定だったが、4+になり、最後まで読み通した段階で感想5・テキストの評価以外付けられなくなった。本書に関しては、著者の学識に捻じ伏せられた形である。もちろんすべての論に対して同意とはいかないが、喧嘩ではないので、捻じ伏せられるような読書体験ができたことは、俺にとって有意義であり、著者に感謝の念を覚えている。
本書は、著者という大知識人で大常識人によって真理と本音(ほんね)が正直に語られたテキストである。著者は、内田樹『日本辺境論』を「本そのものが著者自身の考えたビッグピクチャーだった(略)。そういう大きな捉え方(枠組み)を自ら作って提示した」(133ページ)と称揚する。スケールの大きな視野から観た上で、善悪二元論を排し、物事に対して《加減》を大事にする人だ、と思う。行き過ぎもダメだし、やらな過ぎもダメなのだ。案外、ここの《塩梅》に論を踏み込める人は少ない。たくさんの付箋をしたのでまた読み返そうと思う。
【目次】まえがき
第1章 「自分」は矢印に過ぎない :自分よりも他人を知ったほうがいい/理想像を持ったことがない/地図の中の矢印/溶けていく自分/臨死体験はなぜ気持ちいいのか/意識は自分をえこひいきする/生首はなぜ怖い/誰もが幽体離脱可能/どっちでもいい
第2章 本当の自分は最後に残る :弟子は師匠になれない/オリジナリティと学問/恋をしていた「自分」は別人/世間の本質は変わらない/思想は自由/脳は顔色をうかがう
第3章 私の体は私だけのものではない :体内の他者/チョウと幼虫は同じ生きものか/体内はウイルスだらけ/共生の強み/シロアリとアメーバ/私は環境の一部/田んぼは私
第4章 エネルギー問題は自分自身の問題 :原発も世界の一部/エネルギーは一長一短/成長を疑う/エネルギーの限界/長期的な議論をする場が必要
第5章 日本のシステムは生きている :デモをどう考えるか/デモへの違和感/連帯は怪しい/馴染めないから考える/政治問題化の弊害/安保の頃/思想は無意識の中にある/世間の暗黙のルール/江戸の不思議な人材登用/変人もまたよい/日本の自殺は多いか/世間といじめ
第6章 絆には良し悪しがある :絆のいい面を見る/個人主義は馴染まない/不信は高くつく/橋下市長を信用するか/あこぎはできない
第7章 政治は現実を動かさない :選挙はおまじないである/世界はオレオレ詐欺だらけ/言葉は現実を動かさない/「やったつもり」でことを進める/やはり参勤交代/官僚の頭を変える/知的生産とはホラの集積である/医学は科学か/闇雲に動く意味/政治は生活と関係ない/無関心もまたよし/リーダー次第ではない/フラフラしていていい
第8章 「自分」以外の存在を意識する :ゼンメルワイスの発見/「がんと闘わない」は正解か/小渕首相の賭け/待機的が正解とは限らない/身内の問題/臨終間際の治療は不要か/「私の死」は存在しない/親孝行の本当の意味/福沢諭吉の勘違い/「我」はいらない/意識外を意識せよ
第9章 あふれる情報に左右されないために :純粋さの危うさ/排外デモの純粋さ/情報過多の問題/メタメッセージの怖さ/医学の勘違い/なぜ政治が一面なのか/軍国主義の誕生/生きていることは危ないこと/テヘランの死神/柳の下にいつもドジョウはいない/鎖国の効能/適切な情報量とは/ツールは面倒くさい/地に足をつけよ
第10章 自信は「自分」で育てるもの :一次産業と情報/脳は楽をしたがる/厄介だから生きている/仕事は状況込みのもの/人生はゴツゴツしたもの/自分の胃袋を知る/自信を育てるのは自分
あとがき
【内容紹介】「自分探し」なんてムダなこと。「本当の自分」を探すよりも、「本物の自信」を育てたほうがいい。脳、人生、医療、死、情報、仕事など、あらゆるテーマについて、頭の中にある「壁」を超えたときに、新たな思考の次元が見えてくる。「自分とは地図の中の矢印である」「自分以外の存在を意識せよ」「仕事とは厄介な状況ごと背負うこと」――『バカの壁』から十一年、最初から最後まで目からウロコの指摘が詰まった一冊。
223ページ 所要時間3:35 古本市場86円
著者77歳(1937生まれ)。神奈川県鎌倉市生まれ。1962年東京大学医学部卒業後、解剖学教室に入る。1995年東京大学医学部教授を退官し、2017年11月現在東京大学名誉教授。著書に『からだの見方』『形を読む』『唯脳論』『バカの壁』『養老孟司の大言論I〜III』など多数。
著者の著作には、その冷静過ぎる(?)語り口に対して「あなたがきちんと整理して語るほどには読者の俺は今の社会を冷静に距離をとって眺めてられないんだ。こちとらもっと切実なんだ」という違和感と反発を覚えながら、一方でその学識の高さに承服せざるを得ない現実で揺れながら、「まあ頭を下げきることは出来ないが、認めざるを得ないということで、感想4ってとこかな。」というのを繰り返してきた。
本書でも、半ば過ぎまで感想4の予定だったが、4+になり、最後まで読み通した段階で感想5・テキストの評価以外付けられなくなった。本書に関しては、著者の学識に捻じ伏せられた形である。もちろんすべての論に対して同意とはいかないが、喧嘩ではないので、捻じ伏せられるような読書体験ができたことは、俺にとって有意義であり、著者に感謝の念を覚えている。
本書は、著者という大知識人で大常識人によって真理と本音(ほんね)が正直に語られたテキストである。著者は、内田樹『日本辺境論』を「本そのものが著者自身の考えたビッグピクチャーだった(略)。そういう大きな捉え方(枠組み)を自ら作って提示した」(133ページ)と称揚する。スケールの大きな視野から観た上で、善悪二元論を排し、物事に対して《加減》を大事にする人だ、と思う。行き過ぎもダメだし、やらな過ぎもダメなのだ。案外、ここの《塩梅》に論を踏み込める人は少ない。たくさんの付箋をしたのでまた読み返そうと思う。
【目次】まえがき
第1章 「自分」は矢印に過ぎない :自分よりも他人を知ったほうがいい/理想像を持ったことがない/地図の中の矢印/溶けていく自分/臨死体験はなぜ気持ちいいのか/意識は自分をえこひいきする/生首はなぜ怖い/誰もが幽体離脱可能/どっちでもいい
第2章 本当の自分は最後に残る :弟子は師匠になれない/オリジナリティと学問/恋をしていた「自分」は別人/世間の本質は変わらない/思想は自由/脳は顔色をうかがう
第3章 私の体は私だけのものではない :体内の他者/チョウと幼虫は同じ生きものか/体内はウイルスだらけ/共生の強み/シロアリとアメーバ/私は環境の一部/田んぼは私
第4章 エネルギー問題は自分自身の問題 :原発も世界の一部/エネルギーは一長一短/成長を疑う/エネルギーの限界/長期的な議論をする場が必要
第5章 日本のシステムは生きている :デモをどう考えるか/デモへの違和感/連帯は怪しい/馴染めないから考える/政治問題化の弊害/安保の頃/思想は無意識の中にある/世間の暗黙のルール/江戸の不思議な人材登用/変人もまたよい/日本の自殺は多いか/世間といじめ
第6章 絆には良し悪しがある :絆のいい面を見る/個人主義は馴染まない/不信は高くつく/橋下市長を信用するか/あこぎはできない
第7章 政治は現実を動かさない :選挙はおまじないである/世界はオレオレ詐欺だらけ/言葉は現実を動かさない/「やったつもり」でことを進める/やはり参勤交代/官僚の頭を変える/知的生産とはホラの集積である/医学は科学か/闇雲に動く意味/政治は生活と関係ない/無関心もまたよし/リーダー次第ではない/フラフラしていていい
第8章 「自分」以外の存在を意識する :ゼンメルワイスの発見/「がんと闘わない」は正解か/小渕首相の賭け/待機的が正解とは限らない/身内の問題/臨終間際の治療は不要か/「私の死」は存在しない/親孝行の本当の意味/福沢諭吉の勘違い/「我」はいらない/意識外を意識せよ
第9章 あふれる情報に左右されないために :純粋さの危うさ/排外デモの純粋さ/情報過多の問題/メタメッセージの怖さ/医学の勘違い/なぜ政治が一面なのか/軍国主義の誕生/生きていることは危ないこと/テヘランの死神/柳の下にいつもドジョウはいない/鎖国の効能/適切な情報量とは/ツールは面倒くさい/地に足をつけよ
第10章 自信は「自分」で育てるもの :一次産業と情報/脳は楽をしたがる/厄介だから生きている/仕事は状況込みのもの/人生はゴツゴツしたもの/自分の胃袋を知る/自信を育てるのは自分
あとがき
【内容紹介】「自分探し」なんてムダなこと。「本当の自分」を探すよりも、「本物の自信」を育てたほうがいい。脳、人生、医療、死、情報、仕事など、あらゆるテーマについて、頭の中にある「壁」を超えたときに、新たな思考の次元が見えてくる。「自分とは地図の中の矢印である」「自分以外の存在を意識せよ」「仕事とは厄介な状況ごと背負うこと」――『バカの壁』から十一年、最初から最後まで目からウロコの指摘が詰まった一冊。