7月28日(土):
上映時間1:46。 何度目だろう。ただ久しぶりに観て、やっぱり良い作品だと改めて思った。重松清の原作も読んでいる。ちょっと琴線に響いたのでよしなしごとを書く。
いじめ自殺騒動(未遂、本人は転校)が一段落した中学の2年1組に代用教員のムラウチ先生(国語)が担任として着任する。彼は、極度の吃音だった。開口一番「卑怯だな。忘れるなんて。先生はどもります、あんまり上手にしゃべれません。でも、本気でしゃべります。だからみんなも本気で聞いてください。本気の言葉を本気で聞くのは当たり前のことです。みんなはそれができなかったから先生はここに来ました。」と言い、撤去されていた生徒の机を教室に戻す。「○○君、お帰り」と。
それだけでなく、毎朝「おはよう、○○くん」と声をかけ続ける。クラス全体が戸惑い、一部の生徒は激しい反発をするが、ムラウチ先生の言葉には表面だけを繕う建て前が無く、その本当の声は徐々に生徒たちに届き始める。本当の声とは、いじめを反省するというのは、整った反省文を書いて、あとは忘れてしまうことではない。本当の反省とは、その事実を忘れないで覚えていることであり、それは<罰>ではなく、<責任>である、ということ。
先生の思いが浸透するにつれて、クラスは混迷を深め、保護者からの突き上げも強まっていくが、ムラウチ先生は意に介さない。これは期限のある代用教員だからできることでもある。いじめを形式的に処理しようとして始まった「青い鳥」の悩み投書箱や原稿用紙の枚数(5枚以上)にこだわって書かせられる反省文のウソ臭さも際立っていく。生徒たちが、級友を自殺未遂に追い込んだことを自らの問題として考えることができ始めたとき、休職していた担任の復帰でムラウチ先生は学校を去る。たった一つのことでも生徒たちに伝えることができれば、それは立派なことだと思う。
「0067 重松清「青い鳥」(新潮社;2007) 感想5 」
「130805 念願のBSシネマ「青い鳥」(2008)の録画ができた! 横目で観終わった。 感想5 」
阿部寛は、いい俳優である。モデル出身なのに?一体、彼はいつの間にこんな良い俳優になっていたのだろう。是枝裕和監督の映画との親和性も納得できる。「坂の上の雲」の秋山好古も良かった。
ここから先は、俗な言葉だが、いじめを忘れようとする学校の教師集団や生徒の様子は、本質に向き合おうとしない姿そのものであり、それは過去の侵略戦争の歴史や差別の歴史を見つめずに、忘れ去ろうとし、実際忘れてしまっている今の日本の姿に重なる。歴史は良いことだけではなく、醜く悪いこともきちんと忘れずに覚え続けることこそがあるべき真実の解決策である。今の日本は「無かったことにする」ばっかりだが、それがいちばん歴史から厳しい仕返し(しっぺ返し)を受けることになることすら思い至らなくなってしまった。今はアベ・アソウ・創価学会政権の下で醜い腐臭のする時代を生きている自覚すら失った時代なのだ。