おとらのブログ

観たもの、見たもの、読んだもの、食べたものについて、ウダウダ、ツラツラ、ヘラヘラ書き綴っています。

傘寿記念 坂東竹三郎の会 ②

2013-08-13 23:51:09 | 観たもの
 竹三郎さんの自主公演、竹三郎さんご自身は喜寿記念の「坂東竹三郎の会」でお終いにされるおつもりだったようですが、亀ちゃん(四代目猿之助さん)が「僕出るからやってほしい」とおっしゃって、今回の公演が決まったそうです。孝夫さんは当初はご出演の予定がなかったそうですが、伊右衛門を頼もうと思っていた役者さんの都合が悪くなって、そのことを竹三郎さんが孝夫さんの前で何の気なしにぽろっとおっしゃったら、「じゃあ、僕が出るわ」と孝夫さんご出演と相成ったそうです。竹三郎さんのご人徳ですよね。

 その孝夫さんの伊右衛門ですが、南北がお好きだし、こういう“色悪”っていうんでしょうか、二枚目の悪いヤツって結構お得意とされている役どころなので、何回も演じていらっしゃっているのかと思っていたら、30年ぶりぐらいだそうですね。何年ぶりであろうが、孝夫さんですので、もちろん完璧!、非の打ち所のない伊右衛門でございました。って書いたものの、実は「四谷怪談」自体が初見なんですが…。まあ、でも、きっと歌舞伎界一の伊右衛門だと思います。

 幕が開くと、孝夫さんは傘張りの内職中です。ブツブツ文句を言いながらの傘張りですが、手際よく張っていらっしゃいました。白塗りの翳のある二枚目です。声もちょっと低め、凄味がございます。先月の一條大蔵卿とは真逆のお役です。どちらもさらりと演じてしまわれるところが、孝夫さんの芸域の広いところでございます。

 隣家の伊藤喜兵衛の孫娘お梅から告白され、お岩さんがいるにもかかわらず結婚の約束をしてしまいます。その時に、お梅の肩を引き寄せ「これでお前も俺の女房だぞえ(←こんな台詞だったような…)」と耳元で囁くんです。ワタクシ、前から17列目という非常に遠いところにいたにもかかわらず、「ヒャァァァ~、ホレェェェ~」とゾクソクっとしてしまいました。孝夫さんといっしょなら地獄の底まででもついて行きますわよって、文楽劇場にお越しのご婦人方はおそらく皆さんそう思われたのではないでしょうか。そんくらい、色気のある格好いい伊右衛門でございます。

 でも、伊右衛門って、本当に自己チューの人間を人間とも思わない悪いヤツです。悪いことをしたなんてこれっぽっちも思ってなくて、普通に考えれば絶対忌避される男なのに、なぜか惹かれます。目が離せません。孝夫さんが演じているからか、あるいは鶴屋南北の人物形成の上手さなのか、両方なんでしょうね。

 竹三郎さんのお岩さん、情念がこもっていて怖かったです。怨念ではありません。伊右衛門(=孝夫さん)のことが本当に好きだから。今回はそんなに怖い場面がなかったからいいけど、もっと長い時間見ていたら、きっとその夜はトイレに行けなくなっていたかもしれません。

 松之助さん、仁三郎さん、松十郎さん、千壽さんと松嶋屋さんのお弟子さんがワキを固めていらっしゃいました。千壽さん、「夏祭」に引き続き重要な役どころです。なぜか、私までちょっとうれしかったです。

 (感動のカーテンコールはまた明日書きます)

 
 
 お弁当はRF1のサラダ弁当、おやつはきなこ大福でした。 
コメント (2)
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