おとらのブログ

観たもの、見たもの、読んだもの、食べたものについて、ウダウダ、ツラツラ、ヘラヘラ書き綴っています。

「江戸の夢びらき」「桃源」「閉店時間」

2023-01-16 23:08:02 | 読んだもの
 今回はエンタメ系の読んだ本です。

 「江戸の夢びらき」
 
 【内容紹介】
寛文7年(1667)、浪人の娘・恵以はひとりの少年と出会う。子どもながらに柄の悪い侠客たちに囲まれ、芝居に出れば大暴れして舞台を滅茶苦茶にする破天荒さに呆れながらも、恵以は自然と人の注目を集める彼の素質に気づく。少年の名は海老蔵。長じて市川團十郎を名乗り、〈荒事〉の追求の果てに江戸の民衆から信仰にも近い人気を集め、劇作家としても今なお愛される名演目や斬新な演出を次々と生み出した不世出の天才。彼が命をかけた〈荒事〉とは何だったのか、そして、なぜ舞台上で命を落とすこととなったのか。謎多き初代市川團十郎の波乱万丈の生涯を、元禄の狂乱と江戸歌舞伎の胎動とともに描く空前の一代記がここに誕生!

 エビサンの襲名に合わせたかのように11月10日に文庫が発売されました。松井今朝子さんの本なので、面白くないわけはなく、非常にサクサクと読み進むことができました。「鳴神」とか「暫」も出てきて、最初はこんなふうに演じていたのかとほーっと思いました。初代は上方にもご出演で、そこで初代坂田藤十郎とも会ってます。藤十郎さんというと福々しいニコニコ顔の藤十郎さんがパッと浮かんでしまって、どうも作中の描かれ方とは違うんだけど、って思いながら読んでました。二代目は初代が偉大すぎて、なかなか思うような結果が出ず、吉原に入りびたりで、その結果「助六」ができたようで、意休のモデルになる人もいらっしゃったようです。と書きつつ、どこまでが事実でどこまでがフィクションかはわからないのですが。でも、事実だけを書くっていうのも、以前、成田屋さんのことを書いた新書を読もうとしましたが、ちょっとしんどくなって、途中で読むのを止めてしまいました。なかなか塩梅が難しいですね。

 「桃源」
 
 【内容紹介】
「な、勤ちゃん、刑事稼業は上司より相棒や」大阪府警泉尾署刑事課捜査二係の新垣遼太郎×上坂勤が、南西諸島を舞台とするトレジャーハント事件に挑む!新たな正統派警察捜査小説シリーズ、ここに誕生。
大阪府警泉尾署の刑事、新垣と上坂。仲間の金六百万円を持ち逃げした比嘉を追って沖縄に飛んだ二人が辿り着いたのは、近海に沈む中国船から美術品を引き上げるという大掛かりなトレジャーハントへの出資ビジネスだった───。遺骨収集、景徳鎮、クルーザーチャーター。様々な情報と思惑が錯綜するなか、真実はどこに向かうのか。新結成の凸凹コンビが事件の謎に迫る。新シリーズ開幕!

 黒川博行さんの本です。推理小説って同じ作家さんのを大量に読むと、何となくみんな同じに見えて飽きてくるのですが、黒川さんのはつい手に取ってしまいます。かなり分厚い本ですが、一気に読めました。やっぱり面白いです。黒川さんの本は社会問題的な知識も得ることができるのでお勉強になります。今回も沈船ビジネスなるものを初めて知りました。世の中にはいろいろな商売があるものだと思います。最初はごちゃごちゃして、人もいっぱい出てくるし、「どうなるのか?」と思いましたが、最後はきっちりと解決しました。そういうのも快感になるんでしょうね。それと、大阪弁、大阪が舞台っていうのもポイント高いです。

 「閉店時間」
 
 【内容紹介】
花形企業の東京デパートに働く紀美子、節子、サユリ。同じ高校の同級生仲良し3人だが、配属された呉服売場、食料品売り場、エレベーター係という職場の違いも影響し、三者三様の仕事と恋の悩みがあった。仕事と恋愛を通して成長していく女性の姿を描く傑作長編。圧巻の面白さの元祖・お仕事小説、初文庫!

 昭和38年に刊行された有吉佐和子さんの本です。百貨店が舞台ということであれば、“百貨店愛好家”のワタシは読まなければなりますまい!と思いまして。時代設定は昭和30年代前半だと思いますが、「これって今のお話ですか?」って思ってしまいました。もちろん、当時よりは女性の社会進出が進み、バリバリお仕事されてる方も多くなってると思うのですが、OLさん、事務員さん、店員さんって括られるような人種は60年以上経っても、あまり変わってないような気がしました。ワタシがそのぼんやりとした括りの中でちまちま仕事をしているから、よけいそう思うのかもしれませんが。これも有吉さんなので、とても面白いのですが、ちょっと切なくなりました。百貨店が6時閉店っていうのが、唯一「時代が変わった」って思った点でした。
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「その名を暴け」「日本の中絶」「キリスト教美術史」

2023-01-14 22:39:35 | 読んだもの
 長らく中断しております「読んだもの」です。何度も書いておりますが、拙ブログ、そもそも“読書日記”をつけたくて始めたはずなんですが…

「その名を暴け #Me Tooに火をつけたジャーナリストたちの闘い」
 
 【内容紹介】
2017年、ニューヨーク・タイムズ紙に掲載された記事が世界を変えた。映画界で権力を誇る有名プロデューサーが、女優や従業員らに性的虐待を行ってきた衝撃の事実。報道の背景には、二人の記者による被害者への丹念な取材や加害者側との駆け引きがあった。その日を境に、女性たちは声を上げ始めた――。#MeToo運動を拡げたピュリッツァー賞受賞記事の内幕を描く調査報道ノンフィクション。

 #Me Too運動のことは見聞きしたけれど、詳しくは知らなかったので、ちょっと読んでみようかと。映画を見ない人なので、加害者の有名プロデューサーも被害者の女優さんたちも全く存じ上げず、「あぁ、あの人ね」ってわかればもうちょっと面白いのかなぁと思って読み始めましたが、読み進むうちにそういうことは気にならなくなりました。何となく、アメリカならもっと開けてて、すいすい取材が進むのかしらと思っていたのですが、男性中心社会であることに変わりないんですね。取材がなかなか前に進まず「う~ん」ってなったり、露骨に妨害してくる相手に「もうっ」ってなったり、記事発表にこぎつけた瞬間は「やったー!」ってなったり…。トランプさんのことも出てきて、ずっと下品でヤな奴だとは思っていましたが、本当に酷い奴でした。次の大統領選に出ようとしてるけれど、絶対ダメだと思いました。

 「日本の中絶」
 
 【内容紹介】
日本では10人にひとりが経験者といわれる中絶。経口中絶薬の承認から中絶のスティグマ、配偶者同意要件まで、中絶問題の研究家が、世界の動向に照らして日本における中絶の問題点と展望を示す。

 なかなか重いテーマでした。著者の塚原久美さんが21歳の時に中絶と自然流産を経験されており、その罪悪感に長年苦しめられ、中絶問題を研究されることになりました。結婚も妊娠も出産も経験していない身にはちょっとしんどいところもあったけれど、中絶医療や行政、中絶薬のことや避妊、性教育のこと、現在の日本の置かれている状況がよくわかりました。行政も政治も男性だけが牛耳ってて、自分たちの都合の良いように誘導してるってわかってたことではありますが、本当に酷いものですね。バイアグラがソッコー承認されたのに、避妊薬や中絶薬がなかなか承認されません。しかも、もし承認されて売るとしたら、すごい高額になる予定で、これは産婦人科が今の中絶手術で稼いでいる分をそのままスライドさせようとしているからだそうで、久しぶりに「医は算術」って言葉を思い出しました。「水子供養」ってどこかのお寺が1970年代に考え出した“商売”だそうです。「中絶=悪」と刷り込まれている女性の心理につけこんでます。この前どこかのお寺で水子供養のお地蔵さんってあったのですが、「嘘っぱちやん」って思ってしまいました。最初から最後まで重くて、全然ホッとするところはなく、何とも言えない読後感でしたが、読んでよかったと思いました。男性にもぜひ読んでほしい本だと思いました。

 「キリスト教美術史 東方正教会とカトリックの二大潮流」
 
 【内容紹介】
ローマ帝国時代、信仰表明や葬礼を目的として成立したキリスト教美術。四世紀末に帝国は東西分裂し、やがて二つの大きな潮流が生まれる。一方は、1000年にわたって不変の様式美を誇ったビザンティン美術。他方は、ロマネスク、ゴシック、ルネサンス、バロックと変革を続けたローマ・カトリックの美術である。本書は、壮大なキリスト教美術の歴史を一望。100点以上のカラー図版と共に、その特徴と魅力を解説する。 

 西洋絵画の展覧会に行くと、絶対にこのキリスト教美術って出てくるので、勉強しておいた方が面白く見られるかしらと思い手に取りました。カラー図版もあるし、何とかなるかしらと思ったのですが、全然何ともなりませんでした。一応、最後のページまでは進みましたが、読んでる途中「何で、この本買ったんやろうか?」ってページを開けるたびに思ってました。そもそもの問題として、西洋史が苦手でほとんどわからない、キリスト教がよくわからないので、絵の背景となる説明がほぼ意味不明で字を見てるけど頭に入ってこなくて…。アマゾンのレビューを見ると、皆さん「入門書としてよい」と高評価なんですけどね。作者が知らない人だらけっていうのもあったのかもしれません。最後のほうの「ルネッサンス」と「バロック」でようやくボッティチェリ、ダ・ビンチ、ミケランジェロ、ルーベンス、レンブラントと知ってる名前が出てきてちょっとホッとしました。入門書を読むための入門書、みたいなのがあればいいのに、って勝手なことを思ってしまいました。
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「800日間銀座一周」+「銀座界隈ドキドキの日々」

2022-05-26 23:24:23 | 読んだもの
 

 森岡督行さんの「800日間銀座一周」を読みました。著者の森岡さんは銀座の森岡書店の運営者、資生堂のweb花椿に連載されていたそうです。web連載終了(2021年12月23日)からすぐに文庫になったので、書かれてある内容はほぼリアルタイム、コロナ禍の銀座も出てきます。

 内容紹介です。
あんぱんを買い、一杯の酒を飲み、一着のスーツを作る。「一冊の本を売る」コンセプトで人気の森岡書店代表が、銀座の街を現在から過去、そして未来へと旅をする。明治の大火や関東大震災に戦災、そしてコロナ。幾度の危機を経てきた街とそこに関わる人々の魅力を、味のあるイラストと伊藤昊の写真とともに描きだすエッセイ。

 いやぁ、とても面白かったです。ワタシが“銀座好き”という贔屓目を差し引いても面白い本だと思います。↑内容紹介にもあるように、銀座の過去・現在・未来がいろいろと登場して、知ってる話もあるし、初めての話もあるし、「へぇ~~~」といちいちトリビアボタンを押しながら読んでおりました。
 
 web掲載と言う性格上なのか、その“時点”に銀座で起こっていたことが取り上げられているのですが、コロナ禍で移動が制限されていた時期と重なっていて、「う~~~、それ行きたかったよ~~~。見たかったよ~~~。聞きたかったよ~~~。」が続出で、ちょっと悔しい思いもございました。

 本の中に登場するお店は、まだまだ知らない未訪のお店も多く「まだまだ“おのぼりさん”やわ。もっと頑張らなあかんわ」って意味不明な決意も新たにいたしました。

 とても楽しい本でした。歌舞伎座へいらっしゃる皆様、でございます。

 で、この本の中で和田誠さんについて1章割かれておりました。確か昨年大規模な回顧展が開催されて話題になっていました。和田さんが大学を卒業して最初に働かれたのが銀座だったそうで、「銀座界隈ドキドキの日々」というエッセイを書いていらっしゃいます。続きでそれも読みました。
 


 「銀座百点」で2年間連載されていたそうです。銀座の本なので、最初の1、2回は銀座のことも触れてあって、「○○で昼ご飯を食べた」とか「××で打ち合わせをした」とか具体的なお店が出てきましたが、だんだんとそれはなくなり、和田さん若かりし頃の交友録になっていました。和田さんのことはあまりよく存じ上げなかったのですが(どちらかというとレミさんの旦那さんという覚え方をしていた、スミマセン)、すごい多岐にわたるご活躍、イラストだけでなく、陳腐な言葉ですがマルチな才能をお持ちの方でした。和田さんの社会人生活は1960年代から始まるので、現在各分野の大御所と言われるような方が、新人で登場されます。若かりし頃の皆様、とても新鮮です。“類は友を呼ぶ”ではないけれど、才能ある方が集まってくるんですね。それも銀座だからこそ、なんでしょうか。

 こちらの本、1993年に単行本として出版され、97年に文庫になって、2019年に第5刷になってました。こちらもとても楽しい本なので、それだけ読む人が途切れないんでしょうね。↑文庫のカバーが1963年の銀座の地図(和田さんのイラスト)で、今の銀座と比べると面白いです。でございます。
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演劇界2022年4月号

2022-03-04 23:28:30 | 読んだもの
 「演劇界」の最新号でございます。表紙は孝夫さんの一世一代の「碇知盛」でございます。この号をもって休刊となります

 毎月5日発売ですが、今月は3日発売でした。先月号の売り切れのこともあったので、昨日の帰りに職場近くの本屋さんで買おうと思って寄ったら、「売り切れ」の表示になっています。いつもは月末近くまで残ってるのに、びっくりしました。「最終号で売れるとわかっているんだから、もっと大量に仕入れとけよ」とブツクサ呟きながら電車に乗り、家の近くの本屋さんに行ったら1冊だけあって、何とか確保できました。

 特集は「御家の重宝」、それに関連して歌舞伎役者さんの「宝物」ということで、役者さんそれぞれの「宝物」を披露なさっています。役者さん全員、大幹部から名題下まで、名前のアイウエオ順で並んでいます。でも、孝夫さんはありませんでした。必ず回答しないといけないものでもないとは思うし、何か思うところがおありになったんでしょうかね…。玉ちゃんはスナップ写真、建て替え前の歌舞伎座の楽屋で孝夫さんと三津五郎さんと3人で写された写真です。珍しい組み合わせだなぁと思いながら拝見しました。玉ちゃんと三津五郎さんは同じ大和屋さんだから不思議はないんでしょうかね。

 皆さん、それぞれ個性がでていて、人生いろいろ、とても興味深く、読み応えがありました。

 いつも記事を書いていらっしゃる評論家さん、記者さん、ライターさんたちも皆さん「取材を通して得た、珠玉の言葉」というタイトルで寄稿されています。こちらもジーンとするお話が満載です。

 「ぜひ」と言いたいのですが、どうも売り切れの本屋さん続出のようです。演劇出版社でも「品切れ」になっています。「最終号で売れるとわかってるんだから、もっと大量に刷っとけよ」って思ったのはワタシだけではないはず…。ただ、コロナでずっと舞台がお休みの時に出た「歌舞伎俳優から皆様へ」という号を後で増刷してた例があったので、今回はどうされるんでしょうか。
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演劇界3月号

2022-02-07 23:29:24 | 読んだもの
 雑誌「演劇界」の最新号です。吉右衛門さんの追悼特集です。写真も文章もたっぷりです。めちゃくちゃファンではないワタシでも泣けました。ご贔屓の方たちは涙涙ではないでしょうか。

 昨年9月の「盛綱陣屋」はやはりご自身が丑之助クンといっしょに出るおつもりだったようです。3月から鞄に「盛綱陣屋」の台本を入れてらっしゃったそうです。その台本を使って幸四郎さんは盛綱をお勤めになりました。菊ちゃんと丑之助クンと共演なさった「夏祭」は一番のお気に入りの演目だと写真展の時におっしゃっていましたね。「熊谷」とか「俊寛」とか当たり役がいっぱいある中で…。

 孝夫さんも追悼文を寄せていらっしゃるのですが、若手の時によくごいっしょされ、その時のメンバーが吉右衛門さん、辰之助さん、海老蔵さん(團十郎さん)、勘九郎さん(勘三郎さん)、八十助さん(三津五郎さん)で、皆さんあちらに行ってしまわれました。孝夫さんもさぞお寂しいでしょうね。最後に共演された「新薄雪物語」、映像が残っているのであればぜひシネマ歌舞伎化を!と願います。

 「演劇界」編集部の“渾身の”追悼号なんですが、これを見ながら思ったのは、不謹慎、縁起でもないことなんですが、これから今の大幹部が亡くなられた時、こういう追悼号はもうないんですよね。お叱り覚悟で名前を出しますが、孝夫さんも玉ちゃんも確かに「不老」ではあると思うんです。いつまでも瑞々しくお美しいんですが、「不死」ではないと思います。その時に、これだけのボリュームの出版物はもう出ないのか…ってちょっと思ってしまいました。スミマセン、縁起でもないことを書いてしまいました。

 銀座シックスの蔦屋書店では「演劇界」のバックナンバーをそろえたフェアを開催されているそうです。関連の書籍もいっしょに並んでいるようです。近くならば伺うのですが…。残念です。
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和楽 2・3月号

2021-12-27 23:38:46 | 読んだもの
 雑誌「和楽」の最新号です。歌舞伎と文楽が特集されています。表紙は七代目松本幸四郎の弁慶だそうです。「和楽」という雑誌、そもそものコンセプトが「日本美術をもっと楽しく!日本文化をもっと身近に!」なので、こういう特集もそんなに珍しいことではないと思うのですが、今回は、“みんな大好き”“みんな喜ぶ”“みんな待ってる”孝玉コンビが載っております。「2021年最大の熱狂を誌上プレイバック!片岡仁左衛門×坂東玉三郎 歌舞伎を救った奇跡のコンビ」というタイトルの記事があるんです。これは買いですね、奥サン!ワタシも明日本屋さんへGO!です。



 
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正倉院 歴史と宝物

2021-11-08 23:00:35 | 読んだもの
 奈良博の「正倉院展」を見るために読んだ中公新書の「正倉院」です。2008年初版で、2015年で四刷りになっています。著者は杉本一樹さん、2008年当時は宮内庁正倉院事務所長さんでした。

 本の紹介文です。
8世紀半ばに創建された正倉院は、当時の宝物を今に伝える世界でも稀有な存在である。聖武天皇ゆかりの品が目を惹くが、東大寺に関係する品や文書も多く含まれ、内容は多岐にわたる。宝物の献納や出用、御覧の記録をひもとけば、時の朝廷や権力者の姿が浮かび上がると同時に、いかに多くの人々が収蔵品の保存に力を尽くしてきたかがわかり、興味深い。1200年以上にわたって宝物を守り続ける正倉院の歴史をたどる。

 “予習”のつもりで買いましたが、昨日も書いたようにあまり予習にはなってなくて、予習ならば宝物紹介の写真集的なものを見ないといけなかったのかなぁと思いました。でも、本としてはとても面白く読みました。↑紹介文にもあるように、宝物の献納や出用の記録を辿りながら、保存や修復について、担当者ならでは視点で書かれてあって、非常に興味深かったです。

 内容なんですが、目次を書いた方がわかりよいかと…。
 第1章 正倉院とは何か?
 第2章 宝物奉献をめぐってー献物帳の世界
 第3章 宝物の保管と利用ー「曝涼帳」の時代
 第4章 帳外品の由来についてー東大寺の資材と造東大寺司関係品
 第5章 宝庫・宝物の一千年ー平安~江戸末期
 第6章 近現代の正倉院

 「正倉院展」のことはよく聞いても、正倉院自体については、歴史の教科書でも「聖武天皇のゆかりの御物が倉に納められ、それが校倉造のおかげで1200年間とても良い状態で残っていました。」程度の記述で、「ふーん、すごいね」という感想ぐらいしかなく、その1200年という時間の流れにまでは全く考えが及びませんでした。今回この本を読んで、納められた当時のこと、聖武天皇遺愛の品だけではなく、東大寺での法要にまつわる品、造東大寺司(東大寺の事務所)にかかわる品もあり、宮中儀式具やや武器・武具なども含まれているということを知りました。聖武天皇遺愛の品も5回に分けて献納され、それぞれの記録がちゃんと残っていて、だからこそちゃんと保存もできるそうです。

 「出用」というのも初めて知りました。っていうか、この本に書かれてあったことはほぼ全て初めて知ったことだったのですが。いったん倉に納められたものは全てそのまま残っていると思っていたので。そういえば、大河ドラマの「麒麟がくる」で信長が蘭奢待を所望して、持ってこさせたという場面がありましたね。あれって、正倉院から持ち出されてました。展覧会会場に年表があって、そこに「織田信長、蘭奢待拝見」の一行がありました。隣のお客さんも「あ、これや」って指さしていました。きっと「麒麟がくる」のことをおっしゃっていたんでしょうね。信長の後、秀吉も家康も東大寺を訪問しています。東大寺側は「蘭奢待拝見」に備えていたそうですが、どちらも何も言わなかったそうです。

 漢字と年号が多くてなかなか読み進むのは大変ですが、すごくワクワクする本でした。第2章から4章までの正倉院宝物についての記述の部分は全てが「すごいお宝!」っていうのもありますが、それにまつわる文書が残っており、「あーでもない、こーでもない」的な騒動もあったりして面白かったです。東大寺の大仏さんは2回焼けていて、その火が結構間近に迫ってくるのですが、不思議と正倉院は火事にならなかったそうです。落雷で火事(ボヤ?)というのはあったそうです。

 第5章から6章は時代ごとに残っている文書から、その時代時代の事情や担当者の役割や苦悩?まで読み解いてくださっています。宝物は1200年間眠り続けていたわけではないんですね。内容は結構ドラマチックなんですが、著者の杉本さんは研究者でいらっしゃるので、そこは煽ることなく淡々と書いていらっしゃいます。「正倉院展」を見るために読んだ本でしたが、正倉院そのものを見たくなりました。次の奈良博の展覧会は「藤田美術館展」で行く予定にしていますが、今度こそ、正倉院外構まで行きたいと思います。
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「教養として学んでおきたい歌舞伎」

2021-10-11 23:21:54 | 読んだもの
 葛西聖司さんの「教養として学んでおきたい歌舞伎」を読みました。

 内容紹介です。
本書は、日本の伝統芸能「歌舞伎」の魅力が詰まった一冊です。
歌舞伎座に代表される劇場の魅力から、歌舞伎の代表的な演目、著者おすすめの演目の見方、驚きの仕掛けや名セリフの数々、そしてなんといっても役者の魅力について紹介します。
コロナ禍の影響で変わる歌舞伎の興行形態にも触れつつ、令和時代の歌舞伎について、伝統芸能解説の第一人者が語りつくします。

 葛西さんの肩書は「古典芸能解説者」です。何となくまだNHKアナウンサーのイメージが強いのですが。そういえば、山川静夫さんの肩書は「エッセイスト」ですね。Eテレの「にっぽんの芸能」にゲストでご出演の際はそう紹介されています。山川さん、司会が高橋英樹さんになってからはいつも“ノリノリ”でお話しですよね。話が通じる人が出てきてとても嬉しそうです。

 あ、話がそれました。葛西さんです。葛西さんも学生時代から歌舞伎に通い詰めてたそうです。NHKのアナウンサーはまず地方勤務から始まり、葛西さんも東京の歌舞伎座へは年に1~2回しか通えない地方勤務が10年ぐらい続き、その後東京に戻り念願の「劇場中継」の担当になったそうです。そういう方が中継してくださっていたら観てる側も何となくワクワクします。“棒読み”は勘弁してほしいです。

 本の内容ですが、実際の演目を紹介しながら、「基本のキ」を解説されています。出てくる演目は「七段目」「寺子屋」「すし屋」「曽根崎心中」「馬盥」「引窓」「夏祭」「桜姫東文章」「金閣寺」「弁天小僧」「天竺徳兵衛韓噺」「お染の七役」「四の切」「京鹿子娘道成寺」「怪談乳房榎」「新口村」です。「桜姫」を取り上げてるって、“今年”って感じですよね。葛西さんも孝玉コンビの「桜姫」に「うふっ」となったクチなのかしらと勝手にシンパシーを感じています。

 ストーリーだけでなく早替わりや宙乗り、引き抜きについての解説もあって、何回も見ているけれど「あぁ、そうなってたんですね」と納得しました。「道成寺」の引き抜きは、後見だけでなく、踊っている役者さんも胸元の糸を抜きながら踊っているそうです。今度、それ見てみたいと思いました。

 「名セリフと名曲を味わう」という章もあり、そちらで「勧進帳」や「道成寺」「藤娘」の歌詞の解説をしてくださっています。1月の玉ちゃんの「藤娘」はちゃんと予習しておきたいと思います。

 タイトルが「教養として~」となっていたので、もっと入門書のようなものを想像していましたが、かなり奥が深かったです。読むところがいっぱいある本でした。気楽に、どのページからでも読めるのも魅力です。実際の舞台を見たくなります。孝玉コンビの「寺子屋」を見たいと、なぜか思ってしまいました。きっとまた上演されますよね。楽しみに待ちたいと思います。
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「仏教入門」

2021-10-10 17:18:53 | 読んだもの
 松尾剛次さんの「仏教入門」を読みました。

 コロナ禍以降、奈良博もワタシのテリトリーに入ってきました。京博も場所柄お寺関係の展覧会も多いのですが、どちらかというと絵画とか焼き物とか漆工とか美術工芸品みたいなのが中心になっている印象があります。それに比べると奈良博はガッツリ「仏教」って感じで、せっかく行ってても「う~ん、もうちょっと知識があればなぁ…」と思う場面が多々あります。あ、京博の美術工芸品なら知識があるってことではなく、そちらは見て「あ、綺麗!」という感想で全てOKなので。で、一度、ちゃんと仏教の知識も入れてみようかと珍しく殊勝な心掛けで読んだ本です。

 この本の概要です。
仏陀の誕生と基本思想、大乗仏教の成立、アジア各地への展開をわかりやすく述べるとともに、日本の仏教受容、鎌倉新仏教と近代以降の展開など、日本仏教の解説にも力点をおく。日本人の生活や価値観に大きな影響を与えている仏教の本質を知り、現代を生きる私たちにとっての宗教の意味を考えるための本格的で平明な仏教入門。

 ↑“平明な”ってところがポイントです。岩波ジュニア新書は小中学生も読むことを想定しているので、わかりやすいし、偏りがないので、とても読みやすいです。日本の仏教の系統?みたいなのも、学生時代の日本史の教科書で見たよなぁってところまでは覚えていますが、さらに先はすっかり忘却の彼方だったので、もう一度“復習”できました。この本、全体にいえることですが、日本史の教科書の中の「仏教」っていう部分だけを取り出して、時系列にわかりやすく書いてくださってるって感じです。

 えらいお坊さんって大体皆さん比叡山で修行されているんですね。それは今回初めて知りました。「最澄」と「空海」って一対っていうイメージだったので、比叡山と高野山が同じくらいなのかなと勝手に思っていました。どっちが上とか下とかと言う意味ではなく、です。

 今年は「伝教大師1200年大遠忌」だそうで、いろいろ事業があるようです。東博でも「最澄と天台宗のすべて」という展覧会があり、音声ガイドが亀ちゃんだそうです。亀ちゃんは仏教の造詣が深いですからね。この展覧会、来年京博でもあるようなので、それは行くことにしました。

 ついでにみうらじゅんさんの「マイ仏教」も読みました。
 
 みうらじゅんさんの本は初めてです。ちゃんと、って書くと失礼なんですが、仏教について語っていらっしゃいます。面白くてとてもわかりやすかったです。2011年の発行ですが今年で19刷になってました。いとうせいこうさんとの「見仏記」という本もあるようなので、見てみたいと思います。
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週刊文春WOMAN 2021秋号

2021-09-21 23:39:43 | 読んだもの
 先日、チラッとご紹介した「週刊文春WOMAN2021秋号」が本日発売でしたので、早速本屋さんで買ってきました。↑表紙の絵は慎吾ちゃんです。いきなりお値段のことを書くのもアレなんですが、週刊誌って550円もするんですね。ビックリしました。500円玉1枚を握りしめてレジに行ったら、550円と言われ、慌てて千円札を出しました。

 お目当てはもちろん「片岡仁左衛門 孝玉・仁左玉 全11ページ!」でございます。11ページの内訳ですが、カラーのページが4ページ、孝夫さんのインタビュー記事が4ページ、「わたしたちの孝玉・仁左玉」が3ページです。カラーのページは1ページ目は「桜姫東文章」の例のポスター、2ページ目は「桜姫」の舞台写真2枚、3ページ目は「四谷怪談」の伊右衛門とお岩様の一人ずつの写真と38年前の孝夫さんの伊右衛門の写真、4ページ目はインタビュー時の素の孝夫さんです。

 インタビューは、以前拙ブログでもご紹介したSPICEの記事の内容と被ってるところが多かったです。おそらく、記者懇談会で孝夫さんがお話になったことをもとに記事を構成されたと思うので、仕方ないっちゃ仕方ないのですが。もちろん、全くいっしょということはなく、「こんなことも言うたはるわ」ってところもあります。

 今回の「四谷怪談」については、「玉三郎さんとは今年に入って『於染久松色読販』『東文章』をやりましたが、あのように二人が絡んで醸し出されるような特別な場面っていうのは今回はないんです。コンビの演目としては辛口だけどお岩様と伊右衛門のドラマを観ていただきたいですね」とおっしゃっています。←コレは初めてですね、きっと。

 楽しみにしていた「わたしたちの孝玉・仁左玉」は松井今朝子さん、紗久楽さわさん、吉村元希さん、真山仁さんの4名の方が書いていらっしゃいます。もっと10人くらいいらっしゃるのかしらと思っていたので、ちょっとガクッとなってしまったのですが。孝玉コンビのファンの方ばかりですので、ハートマーク飛びまくり、ウフッな内容ではありました。「そうそう、そうよね」て頷きまくりです。

 インタビューは孝夫さんだけです。玉ちゃんのインタビューはありません。玉ちゃん(だけ)ファンの方は、まず内容を確認されてからのほうがいいかもしれません。孝玉コンビの記事以外も結構面白いのがあるので、買って「損した」って気分にはならないと思いますが。
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