歌舞伎座の「四月大歌舞伎」も一昨日無事に千穐楽をお迎えになりました。3月にマンボウが解除され、そのままコロナも収まっていくのかと思いきや、4月に入ってまた少し感染者数が増え、昨年の4月のことが一瞬頭をよぎりましたが、最後まで幕が開き本当によろしゅうございました。おめでとうございます。
孝玉コンビ
の「ぢいさんばあさん」ということで、何があっても「絶対行く!」と固く決意しておりましたが、日々の感染者数の数字に一喜一憂、薄氷を踏む思いでした。一方、自分がかからないという保証もないわけで、遠征の前になると自分の体調がとても気になって、ちょっとくしゃみをしただけで「大丈夫?」って思うし、早くこういうことが気にならない状態になってほしいと思います。
その「ぢいさんばあさん」ですが、演目が発表された時、正直なところ「え、また『ぢいさんばあさん』ですか?」って思ってしまいました。筋書の上演記録を見るとこの10年間で5回見てました。そのうち孝夫さん
は2回あります(るんは時蔵さん)。それとせっかくの孝玉コンビ
なんだから、もうちょっと何かないのかなと…。お二人が共演してくださるだけで十分有難いのですが…。
でも、実際に拝見して、前言は撤回、罰当たりことを思ってお詫び申し上げます
。“
直球ド真ん中ストレートなラブストーリー
”、まことに結構でございました。皆さんがよく「尊い」とおっしゃっているのですが、本当にラブラブなお二人を見ていると拝みたくなりますね。
それにしてもお二人とも若い!なんなんでしょうね、瑞々しいお姿、透明感溢れる声、かいらしい仕草…。それがまたとてもナチュラルなんです。年取ってからのお役のほうが演技してる感がバリバリです。実年齢はぢいさんばあさんより上のはずなんですが。「おかしい…」とマスクの下で何度も呟いてしまいました。
お目当て?のデレデレ・いちゃいちゃ・じゃらじゃらの場面、舞台上は完全に二人だけの世界になっていました。孝夫さん
の頭のてっぺんへ抜けるような鼻にかかった甘えた声、玉ちゃん
のちょっと拗ねたように伊織に甘える声、いちいちキュンキュンしてしまいます。自分に言われているわけではないのに(当たり前!)、何だかドキドキしたり…。客席はおそらく皆さんニタニタしてたと思います。1日目は2列15番の席でしたが、その「ニタニタ」の空気を背中にすごく感じました。全員でニタニタすると客席の空気がそういうふうに流れるんでしょうか。不思議な感覚でした。弟役の隼人クン「いたたまれない…」って何とも言えない顔で帰りますが、その気持ちわかるよ、って言ってあげたかったです。孝玉コンビ
のラブラブ場面は確かにこちらが待ちに待った場面ではあるのですが、こちらの想定以上にいちゃいちゃ、「勝手にやってろ」ってちょっと思ってしまったことも告白します。と言いつつ「この場面、永遠に続いて~」って思ってたんですけどね。本当に
ゴールデンコンビ
でございます。インタビューでお二人ともおっしゃるのは打ち合わせなんかしなくても、言わず語らずで自然にできるということで、50年超の積み重ねってすごいなぁと思います。
ぢいさんとばあさんになってからもラブラブでした。新婚時代とは違って、よりお互いを思いやるラブラブで、しみじみと「良い芝居だなぁ」と涙しました。「ぢいさんとばあさん」なのか、「孝夫さん
と玉ちゃん
」なのか、境目がわからないっていうか、お二人の人生も重なっているような、そういうふうに見てしまいます。ステキに年を取ってますよね、伊織も孝夫さん
も、るんも玉ちゃん
も…。
ばあさんの後、たった30分で玉ちゃん
は粋で鯔背な「姐さん」に変身です。松竹座では“安定の”三階席だったのでよくわからなかったのですが、今回はお着物の柄やかんざしもしっかりと拝見しました。2列目からオペラグラスでガン見してしまいました。2列目からなんて失礼かなと思ったのですが、結構周りの方もご覧になっていたので…。ただ、舞踊は少し後ろに下がった方がよかったです。2日目は12列目で、そちらからのほうが全体が見えて、福之助クンも歌之助クンもあまり気にならず見ることができました。至近距離だと見なくていいことも見えるので。4月の第3部は本当に全てが見どころ、一瞬たりとも見逃せない、充実のお舞台でございました。
第1部と第2部も見たので、一応ちょろっと書いておきます。
第1部は亀ちゃんと松緑さんと愛之助さんの組み合わせ、あまり見ない座組みでとても楽しみにしていたのですが、前半ちょっと意識を失いかけました。ただ、亀ちゃんの台詞で「お誕生の日を祝ってもらった」っていうのがあって、江戸時代ってお誕生日とか意識していたのかとちょっと不思議に思いました。と言うのも、玉ちゃん
のお誕生日が今月の25日で、その日の「ぢいさんばあさん」で、伊織が「今日はるんの誕生日だから」とか「るん、誕生日おめでとう」とか入れ事がある?って期待しながら、江戸時代に「お誕生日」なんて言わないから、言う訳ないよね~って思ってたので、言ってもOKなら、孝夫さん
にも一言言ってほしかったなってちょっと思いました。「お誕生日おめでとう」なんて台詞を孝夫さん
から聞いたら、客席の御婦人方は悶絶死しそうですが。
スミマセン、話がそれました。亀ちゃんが天一坊のお役ですが、怪しげな胡散臭いお役本当によくお似合いです。文覚上人に通ずるところがあるように感じました。
第2部は幸四郎さんの「荒川の佐吉」です。泣けるお芝居です。これ、10年前に孝夫さん
で見ております。いつもなら幸四郎さんを見ながら孝夫さん
に脳内変換するところなんですが、あまりそれはなく、今回は政五郎を白鸚さんがお勤めだったのですが、10年前は吉右衛門さんでそちらを思い出しました。「孝夫さん
と吉右衛門さんが同座してたんやわ」って遠い目になってしまいました。
「義経千本桜所作事時鳥花有里」は30分弱の演目、ボーッとしているうちに終わってしまいました。梅玉さんが義経で、貴公子のお役が良くお似合いでした。壱太郎さん、種ちゃん、マシュマロ米吉クン、虎ちゃんが白拍子のお役、皆さんとてもお綺麗でよろしゅうございました。
遠征するたびに思うことですが、本当にお江戸は充実しています。松竹座もここまでは求めないけれど、もうちょっと頑張ってくれるとウレシイのですが。
1日目は春らしい良いお天気でした。
《オマケ》
往きの新幹線からです。デジカメの方に、富士山のてっぺんが写ってました。一瞬だけ見えました。