兵庫芸文センターで「ハムレット」を見てまいりました。
拙ブログでも何度か書いておりますが、私が生まれて初めて見たお芝居が文学座の「ハムレット」でした。江守徹さんのハムレット、太地喜和子さんのオフィーリア、新橋耐子さんのガートルード、金内喜久男さんのクローディアスでした。もう40年前のことになります。それ以来、幾度となく「ハムレット」は見ています。数えたことはないけれど、おそらく10回近くは見ているような気がします。孝夫さん
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の「ハムレット」もありました。遥くららさんのオフィーリアでした。
今回の「ハムレット」は内野聖陽さんのハムレット、貫地谷しおりさんのオフィーリア、浅野ゆう子さんのガートルード、國村隼さんのクローディアス、北村有起哉さんのホレイショー、壌晴彦さんのポローニアス、村井國夫さんの墓掘りでした(役名は一つしか書いていませんが、今回は全部で14名の出演者で、一人で何役かこなしていらっしゃいました)。
「ハムレット」って見るたびに違います。演出家が変わり役者さんが変われば、印象が変わるのは当たり前っちゃ当たり前なんですが、それでも、同じ戯曲であれば何となく相通ずるものがあるように思うのですが、「ハムレット」だけは全く別物を見ている感じです。“歌は世につれ世は歌につれ”という言葉をもじって“ハムレットは世につれ世はハムレットにつれ”って言葉を思いつきました。昔のハムレットは陰鬱な悩み多き若者でしたが、最近はたぶん深い部分では悩み苦しんでいるんだろうけれど、表面的には明るいというか軽いというか調子がいいというか、何かそんな感じなんです。スタンダードな演出を知らないので、何がいいとか悪いとかは判断できないんですが、最近の描かれ方は変わってきてるよなぁ、って思いました。好き嫌いでいえば、嫌いではありません。っていうかそういう軽い人、好きです。昨日も「内野さんってこんなにお茶目な方だったんですね」と認識を新たにしたくらいです。
スタンダードな「ハムレット」って書きましたが、どういうのなんでしょうね?私が最初に見た文学座の「ハムレット」は、小田島雄志さん翻訳の脚本を木村光一さんが演出なさったということで、当時としては“新しい”部類だったと後で聞きました。高校一年生の小娘でしたので、何が何やら全くわかりませんでしたが、舞台装置が鏡を使っていて、それを回転させて場面転換するっていうのは子供心にも「ほんまの舞台ってこんなんやねんね」って感心したのを覚えています(それまで舞台といえばテレビで見る吉本新喜劇か松竹新喜劇、あれって超写実的な舞台セットですから)。
話が横にそれました。今回の演出はジョン・ケアードさん、翻訳は松岡和子さんとなっていますが、上演台本はそれをもとにジョン・ケアードさんと今井麻緒子さんがお作りになったようです。舞台は能舞台のようでした。衣装も何とな能衣装っぽいような気がしました。照明も登場人物に寄り添っているような(←日本語おかしいかもしれませんが、こんな感じなんです)、今まであまり見たことがない照明の使い方だったように思いました。最後のハムレットとレアティーズの決闘の場面はなんと!竹槍をお使いで、だいぶ「日本」を意識なさっているのかなぁとお見受けしました。竹槍は2メートルぐらいあるもので、この殺陣はすごい迫力でした。ご出演の山口馬木也さんが担当されたそうなんですが、GJでした。
内野さんはじめもともと舞台をなさっていた役者さんがほとんどの中で、浅野ゆう子さんのキャスティングはちょっとビックリでした。ご本人も「ストレートプレイでシェイクスピアでジョン・ケアードさん演出の舞台に声をかけていただくなんて…」とパンフレットでおっしゃっています。でも、案外、といっては失礼なんですが、違和感なく演じていらっしゃって、とても良いガートルードだったように思います。これまであまりガートルードに注目して見ることがなかったのですが、「あぁ、こういう人だったのね」と納得しました。
上演時間3時間の長丁場でしたが(途中15分の休憩あり)、見ごたえのある面白い舞台でした。「ハムレット」、やっぱり良いです。シェイクスピアって、ちかえもんの頃から上演されているんですよね。400年残ってる、続いているお芝居なだけはあります。歌舞伎ぢゃないお芝居もよろしゅうございます。兵庫芸文センターは変にがちゃがちゃしていないステキなお芝居がかかるんですが、前売り発売が半年以上前で、なかなか予定が立てづらく前売りを買いそびれてしまいます。「ハムレット」ということでエイヤッと予約したけれど。反対にそれぐらい前からのほうが後の予定が立てやすいのかもしれませんが。歌舞伎の前売りってギリギリなので、ワタシの場合、そっちとの兼ね合いがあるもので…。
東京公演は既に終わっており、あとは地方公演を残すのみのようです。これだけのカンパニーでの再演は難しいとは思いますが、内野さんにはまたぜひ演っていただきたいですね。シェイクスピアの他の作品でもOKです。華のある役者さんですから。